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その女の左手を見た。
光る指輪は、永遠の愛を誓ったものだろう。
――そうか、結婚したのか。
亮太は彼女の背中に微笑んだ。
恋は地獄だ。
だけど、その地獄から唯一救われる方法がある。唯一、救いの糸となるものがある。
亮太はそれにやっと気づいた。
――杏菜、ずっとずっと幸せにな。
どうか、神様。彼女の人生だけは幸せなものにしてやってください。
地獄に垂らされた唯一の糸。
それは相手の幸せを願うことだ。
それこそが恋という罪の、唯一の救済だ。
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