罪人の恋

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「なぜ、そう思うのですか?」 声が震えそうになった。 「他の事件と決定的に違うことがある」 矢岡は腕を組んで話し出す。 「花瓶が割れていたことだ。他の事件では、犯人は決して現場を荒らすようなことはしていない。住人を殺し、金目のものを盗った後はすぐに現場を離れている」 「でも、たまたま何かのはずみで落として割れたんではないでしょうか」 亮太は必死に答える。喉が締めつけられた。 「それにゲソ痕が違う」 ゲソ(こん)とは足跡のことだ。鑑識課員が採取する。 しまった、と亮太は思った。そこまで注意を払う余裕がなかった。 「でもそれも、たまたま違う靴を履いていたんじゃないでしょうか……」 脇から汗がじっとりと垂れていくのを感じた。
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