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【2】
まるで女優のような輝き。
久々に会った杏菜は、大学時代よりも洗練された美しさになっていた。
その美貌に亮太は頬が熱くなるのを感じた。
うつむく杏菜。
「このままいけば、わたし……捕まらないのかな」
その桜色の唇が動いた。
午後の喫茶店。亮太と杏菜はテーブル席で向かい合っていた。
「大丈夫だよ。オレに任せろって」
窓の外は小雪がちらついている。
「ありがとう……。って言うのも変だよね。人殺しだもん……わたし」
「何も心配するな。最低な夫に苦しめられてきたんだろ」
杏菜の夫、洋祐はそうとうな鬼畜だった。
手を上げることは日常茶飯事で、杏菜の左前腕部を骨折させたこともあるらしい。
極めつけは、杏菜のお腹に宿った新しい命を流産させたことだ。
「亮太くん。味方でいてくれる?」
泣きそうな声でつぶやく杏菜は、ゆっくりと両手を伸ばし、亮太の右手を包み込んだ。
亮太の胸は熱くなった。彼女に見とれて、しばし瞬きを忘れていた。
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