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no.4
勇紀のマンションは、横浜駅から、車でほど近い場所にあった。
築年数はありそうだか、しっかり設計された建物は、古いながらも趣きがあった。
エレベーターで、最上階まで上がると、外側に面した共有の通路から、真夜中のネオン街が見えた。
カチャカチャ
「入れ。」
勇紀が、後ろのおどおどとした一美に向かって言うと、青年は、素直に従った。
部屋は、生活感がなく、殺風景と言えば、聞こえが悪いが、余計な物がない分、片付いては、見えた。
着くなり、勇紀は、冷蔵庫から、缶ビールを取り出すと、一缶は、一美に投げた。
「うわっ。」
「飲め。」
さっきから、命令のような勇紀の言葉が、一美を緊張させる。
「座れ」
指示通り、一美はソファーに座る。
ちょこんと佇むその姿を勇紀は可愛いと思っていた・・・
小さくて、か細くて、少し栗色の髪と、大きな瞳が、勇紀の気持ちをドキドキとさせた。
遠い昔、狂おしいほど愛した男がいたが、苦しめるばかりで、憎まれると、最後は、逃げ出すように、そいつの元から去った。
愛が欲しいのに、巧くできない・・・
目の前の無垢な青年が、勇紀に痛い過去を思い起こさせた。
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