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no.5
プシュ
「頂きます。」
一美がビールを飲むと、カップラーメンやら、お菓子やらがソファー前のテーブルに広げられた。
「腹減っただろ。どれか、食いたいのあるか?」
今度の出会いこそ、逃したくない勇紀は必死だった。何せ、もう、十年近く、ビビっと全身に電気が走るような出会いはなかったのだから。
「大丈夫です。僕、夜食べないの慣れてるので。」
「ジャンクフードとか、嫌か?やっぱり?」
「あっ、すみません。」
コンビニもない、山奥の田舎で育った一美には、このような物は、あまり食べなれなく、胃がムカムカしてしまう。
「本当に、お前、染まってないんだな。いろいろと。」
勇紀がソファーに座らずに、床に座ると、上着を脱ぎ、ネクタイを弛めた。
「一週間前に田舎から、こっちに来ました。」
「あ~、どうりで。」
「あの、僕、そのうち、どこかに売られてしまうんでしょうか?」
「まぁ~、そんな、話もでてるらしいな。」
「。。。」
「怖いか?」
「はい。僕、死ぬんでしょうか。。。?」
一美が肩を震わせ泣き出してしまった。
ぐすん。
「僕を木村さんの側に置いてもらえませんか。何でもします。木村さん、お願いします。助けてください。」
勇紀は、悩ましげな表情を見せたが、決心したように立ち上がると、一美の隣にドカッと腰を下ろした。
「じゃあ、俺とキスできるんなら、お前のことどうにかしてやるよ。。。」
勇紀は、断られる覚悟で、一美に話を持ちかけた。
一瞬の沈黙・・・
「できます。」
そう言うと、一美は目を閉じた。長い睫毛がさっきの涙で濡れている・・・
勇紀はガラにもなく、キス程度で、緊張しながらも、ピンクの唇に自分の唇を重ねた。
柔らかく、甘い一美の唇は、瞬間で、勇紀を
虜にしたのだった。
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