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彼は、その幾つかを拾い上げてみた。
赤い布で出来た小さな鯛。ハンドメイドだった。マジックで目玉や鱗が描いてある。
小判は厚紙を丸く切って、金の色紙を張ったもの。これもマジックで小判の模様が雑っぽく描かれていた。
「へえ。すごいね」
彼は、鯛と小判をかざしながら、自分の目の前に立っていた三毛猫に言った。
彼と同じくらいの背丈の三毛猫だ。
1メートル65センチ。
「これ作るの、相当時間かかったんじゃ……」
「そうではなかろうが!!」
巨大三毛猫が、くわっと口を開けた。
牛若丸が着ているような衣装に似た、浅葱色の半透明の着物に赤紫の袴。
「おめでとう」と叫んだのは、どうやらこの三毛猫らしい。
「もっと驚け。猫が喋っておるのじゃぞ!」
「まあ、たまには、そういうことがあっていいかも。ところで、どうするの、この状況。掃除するの大変だよ。神主さんに怒られると思うし」
彼はうずくまり、石畳の上に大量に散らばっている、くす玉の中身を拾い始める。
「大丈夫じゃ。何せワシは神様だからな」
巨大三毛猫が、胸を張るように言った。
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