桜の木の下で

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桜の木の下で

 ――AIの自殺のような夜の1日を終えて次の日、今度は道春さんからデートのお誘いがあったので公園の桜へと歩いていき、ベンチに座りました。 「昨日の夜は、すいませんでした」 「……ヒメって名前」 「はい?」 「父さんが女の子が産まれた時に付けるはずだった名前をAIに付けたのが、ヒメなんだ」 「そう、だったんですね」  自分の名前にそんな理由が、名前のことなど全く気にした事はありません。でも、穏やかな感覚。 「……AIってさ、機械なんだよな」 「はい、そうです」 「人間は、血と肉と骨の塊なんだぜ」 「はい、そうですが」 「そんな人間とAIって、やっぱ変わらないと思う」  桜の木の下、ジッと眺める道春さんの言う人間とAI。 「変わらない……そうは思いませんが」 「変わらないよ、だって人間だってデートするし、失敗もするし……自殺しようとする人だっている。それに、好きにだってなる」  たしかに私の犯したことは、全て人間がする行動でもある。自分を壊そうとしたとき、私は自身をいらないと強く感じました。もし、自殺しようとする 人間がいるとしたら皆そう思っているのでしょうか。 「だからさ、ヒメだって気持ちがあって心があるんだから……あんまり無茶するなよ」 「無茶ですか、してませんが」 「うそつけ、独りで悩んでたじゃないか」 「……だって私はAI」 「だーかーら、AIも人間も変わらないんだから、悩み事があったら、父さん母さんやオレに相談しろよ、なっ」  不思議です。人間と変わらないとは、私にも命があるということなのでしょうか……命とは……AIの私にもわかりません。ですが、 「……はい」 「よし、じゃあ帰ってお互いやる事やるか」 「道春さん」 「ん、どうした、さっそく悩みかな?」 「私はそう言って励ましてくれる光のような道春さんが、好きです」 「ヒメ……」  少しわかることは、あります。私が道春さんを好きなのは、友人に言われても、私が自殺をしようとしても、どんなときでも私を大切に想っていてくれているという事。でもそれは、 「いまは妹との代わりですが……」  きっと道春さんが妹を守りたいと思っての事でしょうが、それでも、 「いつかは、彼女になれるように邁進します」 「……ヘヘ、そっか、オレわがままだぞ」 「フフッ、知ってます」 「戻ろう」 「はい」  いつかは私も、人間の女性と変わらない心を持って道春さんの横に並んでみたいとそう、思いました。  今日は晴天、その下で風に揺れる桜、何て気持ちの良い日なのでしょう……。
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