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デート
「――今日の最高気温は21度で快晴です」
「そうだったっけか、いいデートびよりだな。でっ
、どこ行きたいんだ」
「……ここら辺を、一緒に歩かせてください」
十望木家の周りは国道から少し離れていてそこの近所の桜が見てみたかったのです。
「綺麗な桜、ですね……」
しかし今年は、3月下旬で咲いている桜は満開とはいきません。
「ああ、でもやっぱまだ八分咲きってところだな」
「……6.75咲きです」
「いや、そこはいいんだよ」
「いえ、正確に」
「わかったわかった楽しく行こうぜ、せっかくのデートだろ」
「……この白い大島桜も綺麗」
この桜も満開ではないけれど、それでも少しの一咲二咲がくっついているように咲いていてなんだか和みます。
「ほんと暖かくなったな」
「そうですね、気温が上がりましたから」
「ヒメはAIだから体温は感じないけど、冬は寒いんだぜ」
「11月22日、午後18時23分には炬燵で丸まってましたね」
「細かく言わんでいい」
12月から2月の道春さんはほとんど炬燵から動かずにずっとゲームをやっていてお母さんから勉強をするようにと言われていたので、私はよくスイッチを切ってリビングから追い出しました。
「おまえよく『勉強してください』って言って何回もスイッチ切るんだもんなぁ〜」
「あれは道春さんが何回言っても炬燵から動かないのが原因です。お母さんは大切な時期に勉強をしてほし……」
「はいはいその先はわかったから、ほらっ、桜の続きだ」
綺麗な桜を観ていたらいつの間にか去年のお話しになってしまいましたが、なんでしょう、懐かしいと言うのでしょうか。あの時の丸まった道春さんを3月に入ってからみていません。これが大切な思い出というものなのでしょうか。
あと桜を観て暖かさを感じた気がしましたが、どうしてかすぐに消えて下を向いてしまいました。
なぜでしょう、綺麗な桜だったのに……。
「――なんか変な感じだな〜、アムッ」
「どうぞ、ごゆっくりとレストランのハンバーグを食べてください」
「……オレが自分でお金出してるんだからな」
「はい」
次はレストランに一緒に入りました。そこでやってみたいことがあったのです。
「はい、アーン」
「……ヒメ、ふざけてる?」
「いえ、私が食べさせてあげるんです。はい、アーン」
「これがやりたい事か?」
「そうです、はい、アーン」
食べさせてあげたらハンバーグが熱かったのか道春さんは体温が上昇してしまいました。
「熱かったようですね、私がフーフーしましょう」
「そんなんじゃ」
ウイーンッと体の中の冷気をハンバーグに吹きかけました。
「……これじゃあ冷凍ハンバーグだよ、パクッ……やっぱ冷たい……」
冷やしてあげたら彼の眉尻がみるみる下って、人間とのデートは難しいです。私は女の子型AIですが人間の女性の方々は日々このような事を乗り越えていると思いますと尊敬します。
「……ヒメさあ」
「はい、なんでしょう、おかわりですか」
「どうして廃棄されるのかって父さんや母さんに話さなかったんだ?」
「それは……私はAIで機械ですので、時が経てば廃棄されるのは自然な事です」
「ふ~ん、自然な事ね〜、機械なのに……」
何でしょうこれは、正しい事を言っている筈なのに私は頭を横に曲げてしまう。
故障でしょうか、自分で内部を調べても問題ありませんしこれでは廃棄されて当然かもしれません……。
「――桜をみて、俺だけだけどレストランで食べて、まだデートでよるとこあるのか?」
「はい……試着してみたいものがあって……」
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