命をかんじる

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命をかんじる

「――これが、私」  ここは制服専門店で試着させてもらったのはセーラー服。鏡に映る私、これで体が肌色だったら完全に女子高生です。 「どうだ、気に入ったか?」 「……はい」  女子高生とはどんな生活なのだろうか、学校というのには興味があります。  勉強や部活とか情報は知っていますし恋愛もする女子もいるとわかっていますが、たまに外で目にする彼女たちは友達とお喋りをしていたり、スカートをヒラヒラさせて走って行ったりと星のように輝かしいと言うのでしょうか。  そんな学校に行けたら私は友だちが出来るでしょうかと考えながらカーテンを開きました。 「道春さん……どうですか」 「うん、似合ってるじゃん」 「そう、ですか」  なぜでしょう、いままで暗い感覚が吹き飛んで春のような心地は、不思議です。 「……こんな感じなのかな」 「道春さん……」  一通り行きたい所に寄らせてもらったのでベンチで道春さんの休憩をかねて一緒に座ることにしました。 「ああヒメ、いま何時?」 「15時です」 「15時か〜……オレ大学行っても上手くいくかな〜」 「不安ですか」 「そりゃそうだよ、うまく馴染めないと辛いじゃん。勉強だって特別優秀じゃないし、スポーツだって昔からパッとしなくて野球とかすぐやめちゃったからな〜」  高校生活をおくっていた道春さんは勉強もスポーツも特に目立った子ではありませんでした。 「でも、お友達はたくさん居たじゃないですか」 「コミュニケーションが良いのかな……いや、恵まれてただけだよオレなんて」  お話をしている道春さんは、今日のデートで初めて眼鏡の奥から不安そうな眼を滲ませました。 「そんなことはありません、人と仲良く出来るコミュニケーションは誰でも真似できるものではない立派な道春さんの能力です」 「ハハッ、ヒメに励まされるなんてな」 「おかしいんですか?」 「いや、ヒメはAIだけどそう思ってくれて嬉しいよ……ありがとう」 「……あの私も聞きたいことがあります」 「ん、なにを?」 「さっきの『こんな感じ』っとは何でしょうか」  どうしてか、その時の言葉がいつもの道春さんとは雰囲気が違っていたようで頭に残っていました。 「……妹だったらって思ってさ」 「妹? 道春さんは一人っ子です」 「オレが幼いとき、母さんは流産したんだよ」  妊娠22週未満で妊娠が終わってしまう事であり、赤ちゃん側または母体側の何らかしらの原因で起こる流産。 「そんときオレまだガキで、弟か妹が産まれると思ってワクワクしてた」 「そんなことが、あったんですね」 「知ったときはずっと『どうして、どうして?』ってしつこく聞いてた。一番辛かったのは母さんだったってのに」 「仕方ありません幼かったのですから」 「だからかな、ヒメの制服姿みたら妹ってこんな感じなのかなって思った」  流産で失った命。  命、そのようなモノはAIにはありません。人間の利益のために生み出され、より良いモノが出来るたびに捨てられるのがモノの定めなのですから。  でも道春さんと話しているときに尊い、といいますか、これが命を感じる、ということならAIとしてはおかしな現象です。 「道春さん」 「おうヒメ、次はどこ行くか決まった?」 「好きです……」
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