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告白
「お、おいどうしたんだよヒメ」
「道春さんは覚えていないかも知れませんが……」
それは、4年前の事です――。
同級生と思われる方達と道春さんはお家の近くで何やら揉め事をしていて、その時に私は気がついて玄関の隅から聞いていました。
「道春ん家もAIあるんだってな」
「うん、去年くらいから」
「番号は?」
「AIー396」
「それ古い型番じゃん、やっぱ最新の800番代じゃないと」
4年前のこの頃はお友達の言う製品で800番シリーズが新型でした。
「いいんだよ、だって……」
家族……。
「笑う友だちを前にしてもまったく引かない道春さんは私に家族と言ってくれました」
「そんなことあったっけか」
「……嬉しい、という気持ちなのでしょうか。難しいです」
「それでオレを好きに?」
「はい……すいません、私は人間の女性ではないので、キュンとするようなハートがたくさん出るような事は出来ませんが」
「それは少女漫画のデータじゃないのかなあ」
「ただ、私が言葉に表すなら『うれしい』と『好き』が良い、と思ったんです」
これで良いのか私の頭の機械は何も答えませんが、廃棄されてしまう前に道春さんには伝えておきたかったんです。
「デートに付き合ってもらい、ありがとうございました」
「ヒメ……」
「お家に戻りましょう」
後は処分される日まで私は十望木家に尽くすまでです……。
「台所、だいどころ……」
脚が遅い、いや重い。尽くすと答えが出たはずなのに、どこか靄を感じます。ちゃんと告白もして問題ないはずなのに。
「ヒメ……おいヒメ」
「あ、はい、道春さん」
「どうしたんだよ、らしくないじゃないか」
「お皿は洗ってますので」
AIの私が道春さんの声を聞き逃していたなんて、自分で調べても故障箇所はないのに、駄目ですね。
――夜の時間になったので暗い中をベッドメイキングをしていました。しかし私はあの道春さんの声を聞き逃した事が頭に残っていたんです。
「どうして……わたし……壊れて、ないのに」
「いつもありがとうね、ヒメちゃん」
道春さんのお母さんの声に振り向いたその時、今度はビリッと布団のカバーを誤って破けてしまいました。
「す、すいません!」
「え……めずらしいわね……ヒメちゃん大丈夫?」
「……いえ、駄目かもしれません」
「ヒメ……」
このとき上がってきた道春さんにも見られてしまったんです。こんな失態は初めてで、これが顔向けが出来ないということでしょうか。ここで私は決めました……。
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