人間とAI

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人間とAI

 一通り片付け終わった夜に私は静かに家の中を歩いて、を手に取りました。  バチバチッ、  バチバチッ。 「これで私は……」 「ヒメッ、おまえっ、何やってんだやめろっ!」 「道春さん、どうして……」 「をはなせっ!」  寝ていたはずの道春さんが起きてきて、ドライバーを取り上げるとリビングの明かりを付けました。 「はぁ、はぁ、何でドライバーを」 「……不要な機械の処分です」 「不要ってっおまえ……ヒメ、自分のことか」 「はい」  大声に驚いた道春さんの両親も慌てて降りてきました。 「どうしたの道春……ってヒメちゃんっ!」  露出した私の胸の機械部分。 「そんなことしたらっ、お前が壊れるだろうがっ!」 「はい、壊すんです」 「なんでよヒメちゃん」 「父さん母さん、酔った2人が悪ふざけで捨てるって言った冗談話しを真に受けたんだよ」  驚いた両親は、AIの私に両手を付いて、躊躇なく謝ってきて驚きました。 「ヒメちゃん、ごめんっ」 「ごめんなさいヒメちゃん」 「冗談……だったんですね。頭をあげてください」 「……ヒメ」 「道春さん」  いつも穏やかな道春さんではありませんでした。 「ヒメッ、オレのことが好きだったんじゃないのかっ!」 「はい、そうです、好きです」 「じゃあ……何でみたいなことをしたんだっ!」  自殺とは、自分で自分の命を絶つこと。でもそれは人間での話、私には。 「なんで……なんで好きな人がいて自殺するんだよ……ううっ」 「みち、はる……さん」  道春さんはその場で膝を付き、涙を流しました。つられるように両親も。 「ヒメちゃ〜んっ、死なないで〜!」 「オレが悪かったから考えなおしてくれよ〜!」  この光景を目の当たりにして私は一番いけないことをしてしまったように思います。この涙という不思議な塩水は、あるはずのない私の命に対して流れているような。 「ヒメ、おまえ怖かったんだろ」 「いえ……」 「オレたちに捨てられる事が」 「それは……」 「だからおまえは、オレたちに捨てられる前に自分で自殺しようとしたんだ!」  そんなことはないと何故か強く否定出来ません。考えさせられます。  私はいままでにしたことのないミスをした自分が不要と思いました。  許せなかった……ような、こんなことだから……捨てられ……あっ……。 「道春さんっ」 「ごめんな、大切な妹を不安な思いをさせて」  抱きしめてくれた道春さん。人間だったのなら、温もりを感じられた事でしょう。 「みち、はるさん……」 「ヒメが……わらった……」
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