Chapter.1

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【04】  マウンドが少しだけ明るく感じた。 秀介は円谷先輩のサインを見る。 あの試合でエースに復帰できた。 どんな打球も怖くない。 その勇気の源はもう一つあった。 秀介は観客席に目を向ける。 そこでは 私服姿のまりあが退屈そうに試合を眺めている。 敢えて順序を崩して胸を十字に切ったところ 「あっかんべー」をされてしまった。 神を信じてはいない。 しかし、あの日まりあからもらった “勇気”は決して気のせいでは無かった。 その事を彼女に伝えたら何と言うだろう。 秀介はスッと息を吐き、セットポジションに入る。 そしてキャッチャーミットへと白球を投げ込んだ。 微塵も震えていない、この右手で。
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