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【01】
白いマリア像が今日は険しく見える。
久世秀介[くぜ しゅうすけ]は
インターフォンを押すと慌てて帽子を取った。
野球部員が人と喋る時のルールだ。
それと謝る時。
ステンドグラスの扉が開くと
中から若いシスターか出て来た。
「あの、野球部の…」
「貴方ですか!コレを投げてきたのは!?」
豊かな栗毛色の髪をした彼女は
汚れた軟式ボールを握りしめている。
自分と同い年くらいだろうか
穏やかそうな垂れ目も今はつり上がっている。
かなり怒っている様だ。
「すいません。何か壊れたりは?」
「ガラスが割れたんですよ、礼拝堂の!
神様のお部屋ですよ!」
とても大切な場所らしい。
シスターはドアを大きく開ける。
「さ、来て下さい」
「どこへ?」
「シスター高槻[たかつき]のお部屋。
覚悟して下さいね」
ボールを返してくれなさそうだ。
秀介は仕方なく足を踏み入れた。
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