Chapter.1

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そして勢いよく“仮面”が剥がされる。 まりあ。 「な、何で…」 「間に合った…」 目が合うと彼女は笑顔になった。 二人の視線が絡み合う。 そこで秀介はニヤリと笑ってから胸の前を十字で切る。 正しい順序で。 まりあは目を見開いた。 秀介は視線を打者へ戻した。 もう、震えはない。 「ストライーック!」  今までで一番良い球が走った。 これには流石の主砲も目を見開く。 9回裏スリーボール、ツーストライク。 その場にいる全員が息を飲む。 見ると、まりあは両手を胸の前で組みながら ぶつぶつと何か呟いていた。 お祈り。 何の意味もない、そう馬鹿にしていた筈なのに どうしてこんなに頼もしく見えるのだろう。 どうして力が湧いてくるのだろう。 秀介はゆっくりと息を吐き切り、振りかぶる。 コントロール、スピード、切れ 全てが完璧に揃った一球が手から放たれた。 しかし相手のバットが無情にも振り下ろされる。 物凄い打球音がグラウンドに響いた。
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