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秀介はもう一度投げる。
「ファーボール!」
ランナーが進んでしまい一塁二塁。
こちらがリードしているものの点差はたった1点だ、
少しの弾みで逆転されてしまう。
そして次のバッターが来た。
4番、チーム内最強の主砲。
秀介は思い切りボールを投げる。
しかし…
「ボール!」
クソッ!
臆病な右手はまだ震えている。
次もストライクゾーンから外れた所に球が走った。
ボールツー。
その時、キャッチャーの円谷[つぶらや]先輩が
「タイム!」と叫び駆け寄ってきた。
先輩はマスクを外すとグローブを口に当てて喋る。
「大丈夫か?」
「…もしオレが下がったら次は?」
「…白石[しらいし]だ」
ダメだ、
繊細過ぎる白石にこの状況は任せられない。
先輩が言う。
「お前、イップスなんだろ?」
「…………」
「気にせず投げろ。オレが拾ってやる」
そして秀介の返答も待たずに持ち場へ戻り
アンパイアとバッターに礼をしてからしゃがむ。
試合再開。
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