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1日目
困った。
非常に困った。
できるならば、靴箱に来る前の時間に戻りたい。
俺は、何の気なしに拾ってしまった落とし物の封筒を手に、立ち竦む。
封筒の宛名は【K君へ】。
差出人の名前は書かれていない。
丸っこい字から考えても。
間違いなく、女子から意中の男子に宛てたラブレターだろう。
俺のイニシャルはAだ。
高校生にもなって、アルファベットのAとKを書き間違えるヤツがいるとは考えにくい。
つい、うっかり☆(てへぺろ)なんてことも、AとKではありえない。
名も姿も知らぬK君。
キミには悪いが、見なかったふりをさせてもらおう。
恨むなら、古典的な方法をとったにも関わらず。
詰めが甘い、差出人の女子を恨んでくれ。
俺は、靴箱の上に白い封筒を置き。
全てをなかったことにし、革靴を履いて昇降口から出た。
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