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神様のご褒美
「兄さま、行ってきま〜す」
「気をつけるんだよ」
いつものように兄さまに声をかけて、今日もカワジはぴょんと階段に足をかけた。
園児に混ざって同じ年頃の左右に髪を二つくくりした薄い黄色と桃色の和服を着た幼女が、あっという間に階下へと降りていった。ひらりと裾が翻り、桜の模様が楽しく踊る。
近鉄奈良駅の噴水広場を出て右に折れ、東向商店街のアーケードの途中にある奈良基督教教会の会館は開設とともに幼稚園となり、園児たちが出入りし可愛らしい声で和ませてくれている。
カワジはこの世のものではない。いわゆる、妖という存在だった。ふと気づいたらそこにいた。そういうものだったものであり、だから今もここにいる。
初めて人間と話し触られて驚いて卒倒してから少し足が遠のいていたが、再びカワジは座敷童子の住まう古民家へ遊びに行きだした。
そこで集まって人間観察をし、美味しいものを食べる。そして、乙女というものを学ぶのだ。
カワジはぴょんぴょんとスキップするように走りアーケードが一度途切れそこから一歩出ると、秋晴れの爽やかな太陽の下。毎度、つきたてお餅の匂いによだれをジュルリと垂らしながら歩いていく。
すると、そこに見知った妖友のコンの姿。いろんな姿に変身できるコンは前回会った時同様、和服を着た妖艶な女性の姿。はっきり聞いたことはないが、狐の妖ではないかとカワジは思っている。
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