神様のご褒美

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 途端、ふわっと場所が変わる。 人間の指ほどの大きさだった神様のお姿が大きくなり、その向こうには青空が広がる中常緑樹の緑が彩り、ところどころ紅葉の兆しが見える。イチョウも色付き、足元は黄色の絨毯が引かれてあった。    ──ご機嫌が良いようで……。  白鹿はふむっとゆっくりと瞬きをし、細い足で一歩、一歩、彩る大地を踏みしめた。 「変わった願いでしたね」  せっかく神様からご褒美として願いを聞かれたのに、カワジは嬉々としてそれらを願った。 「可愛らしい願いだ」 「はい。願わずとも(えにし)はできてますのに」 「それほど気になるのであろう。それもまた縁。その先はカワジ次第よ。成功してもしなくても、縁を強くすることを願ったのであろうから」  にっと笑みを浮かべるその姿。瞳と思われるそこはゆらゆらと変わり、色も形も定まらない。どこまでも吸い込まれていきそうで、実態を捉えられないそれらが今は秋のような暖色で優しく燃えるように見えた。  白鹿はふっと首を横にやり、枯葉が落ち行くのを眺めた。ひらりと地面に重なるのを見届けると、また神様の姿を捉える。 「ええ。……ところで、壁ドンって何ですか?」  白鹿の言葉が秋の空に吸い込まれた。
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