ピンク色のお茶と無色の二人

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 俺は、イケメンに生まれて女子にほどよくちやほやされるような人生であればどれだけ楽だっただろうか、とずっと考えて生きてきた。イケメンにはイケメンなりの苦難があるということは、斉藤を見て知った。 「女々しいって何? 何だと思う?」 「知らんよ」  斉藤が買ってきてくれた紙パックのイチゴオレをすする。甘いを通り越して薬品の味さえしそうな淡いピンク色の飲み物が、俺は好きでも嫌いでもない。 「誰に言われたん? 彼女?」 「そう。あとその友達の彼氏とか」 「ほーん」  屋上の扉にもたれて膝に顔をうずめる斉藤は、暗い顔で自分のイチゴオレを吸った。  斉藤の話に付き合うために二人で屋上に来ることは、珍しいことではない。気づいたら「いつもの流れ」の一つになっていた。もちろん、お供はイチゴオレだ。 「なんで向こうから告白してきたくせに、期待通りじゃないからっていろいろ言ってくるんだろう。勝手すぎる」 「これ、何人目やっけ」 「五」 「あれまあ」  ストローを噛んでパックを動かして遊ぶ。斉藤が空を見上げた。今日も憎たらしいほど快晴だ。 「傷つかないとでも思われてんのかな」 「よくいろんな人に告白されてるんだから一人にフラれたぐらい平気でしょ~ってことか」 「そう。末野は俺のこと、女々しいって思ったことある?」 「分からん。女々しいが分からんのに」 「そっか」  ズズ、と音をたてて残りわずかなイチゴオレを吸い上げる。
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