12月24日 19:35 雪 気温1度

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 さてと……いつまでも感傷に浸っていられない、今日のノルマを達成しないと。 「ケーキはいかがでしょうか? 地下1階に『特設コーナー』がございます」 「よう、姉ちゃん」  声の聞こえる方へカメラを向ける。赤い顔、左右に揺れる上半身。  酔っ払いのおじ様が声をかけてきました。嗅覚センサーが高濃度のアルコールを検出…… 「ケーキ買ってやってもいいんだけど、何か芸やってみてよ。気に入ったら買ってやる」 「芸ですか? そうですね、私、歌うのが得意です。それでよろしければ?」 「ほう、歌ね。俺これでも昔はパンクロッカーだったんだよ。聴いてやろうじゃないか」 「わかりました、それでは……」  照明を暗く落とし、一灯のスポットライトを上から当てる。  両手を組み、目を閉じると、祈るように私は讃美歌を歌い始めた。  静かな夜、私は舞い降りる  豊かな者にも、貧しき者にも  等しく幸福をもたらすために    聖なる夜、私は旅立つ  大いなる母の元  父が御許(おゆるし)()(くだ)さった  安らかな眠りと永遠(とわ)の喜びが  皆にあらんことを  パチパチパチパチ――  いつの間にか、たくさんの人達が私を囲い、拍手を送ってくれていました。 「すごーい、うまーい!」 「ヒュー、クリスマスに最高!」 「姉ちゃん、やるじゃないか。柄にもなく、感動したよ。もう一曲お願いできるかな?」 「はい……喜んで」  私はみんなの笑顔に囲まれながら、暖かい最後の夜を過ごすことができました。  皆さん、ありがとうございました、そしてさようなら。
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