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「そうなんだ……これが『恋』。ありがとう、勉強になったわ。ところで……お嬢ちゃんはどうしたのかな?」
「……」
「ん?」
「お母さんとはぐれちゃって、どこにいるのか、わからないの」
えっえっと、泣きだす女の子。それは大変です! すぐに探さないと!
「お名前は? それとお母さんはどんな感じの人かな?」
「エリカ。赤いセーターと黒のスカート」
「よーし、待っててね。今探すから」
私は店内の全監視カメラのアクセスを始めた。カメラ映像が私の目の前で、次から次へと流れていく。
1階化粧品コーナー、いない。
2階婦人服フロア、いた! 赤いセーターと黒のスカートがマッチング!
「お母さん、いたよ! 今呼び出すから」
ピンポンパンポーン、迷子のご案内です。婦人服フロアにいらっしゃいますエリカちゃんのお母様、エリカちゃんのお母様、お子様がデパート入口でお待ちしております。すぐにお迎えに来ていただきますよう、お願いいたします。
しばらくすると焦った表情のお母様が走ってきた。
「エリカ! どこ行っちゃうの!」
「……ごめんなさい」
「どうもすみませんでした、ご迷惑おかけして」
お母様はペコペコと私にお辞儀してくれた。
「いえ、これも私のお仕事のひとつです。お気になさらずに」
敬礼のポーズを取ってみた。
「お姉ちゃん、ありがとう。お姉ちゃんの恋、応援してるからね」
「ハイ! 『恋』かどうかはわからないけど、少し勉強するね」
バイバイと手を振ると、女の子とお母様は手をつないで、その場を離れていった。
私はあの人に「恋」をしている?
名前はなんて言うんだろう?
両手を頬に当て、顔を少し赤らめてみた。
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