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「2人とも、お風呂沸いたわよ。どっちが先に入る?それとも小さい頃みたいに一緒に入るかしら?」
そう部屋に入ってきたのはエプロン姿のアスカのお母さん。未だにあの体勢のままの俺たちはお母さんを動揺させたが、何も詮索はしなかった。
「ごめんなさいね和樹くん、うちの子、滅多に甘えないから今爆発しちゃったのかも。申し訳ないけど、アスカとこれからも仲良くしてやって、面倒みてやってね」
「はい、もちろんです」
アスカのお母さんはニコッと微笑み部屋から出ていく。すると、アスカが布団をモゾモゾさせて顔を出してきた。
「俺の面倒押し付けられたな」
「押し付けられたって……」
「前からか。てことで俺の世話係なんだから俺だけ見てろよ」
「臭いセリフ……」
少女漫画で何度見たことか……つい声に出てしまったが、アスカは何も言わなかった。
「本気だからな」
「はいはい」
どちらにせよ、アスカの母親から頼まれては断れない。
「服貸すから先風呂入ってこい」
アスカはようやく布団から出てきてタンスを漁り、俺に半袖半ズボンのパジャマを手渡した。
「ありがとう」
アスカのを着るのは少々気が引けたが、それ以外に着るものもないのでアスカのものを着ることにした。部屋を出て風呂場へ向かう。
こうして風呂場の場所も覚えている自分が少し恥ずかしい。
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風呂から上がりアスカのパジャマを着ると、サイズはピッタリで、そういえば俺とアスカにそんな身長差はなかったなと思い出す。
ドライヤーが見つからなかったので、タオルドライだけしてアスカの部屋へ戻った。
「アスカ、出てきたよ」
「ん」
アスカはそう言うと俺の顔も見ずに通り過ぎていく。
「俺のベッド、使っていーから」
去り際にそうひと言残して。
使えるわけあるかと思ったが、それ以外に寝る場所もない。とりあえずアスカが風呂から出てくるのを待とうと思ってベッドに腰掛けた。
今日は色々あったから疲れた。
ほんと、疲れた。
でも、アスカとこんなに話したのは久しぶりだから嬉しかったかもな。
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アスカが部屋へ戻ると、和樹の姿が見えない。部屋の中まで入ると、ベッドに横たわって寝ている和樹が居た。アスカを待っている間に寝てしまったんだろう。
アスカはナチュラルに和樹の寝ている布団に入り込み和樹を包み込むようにして抱き寄せた。
「…おやすみ」
自分の中に居る和樹の体温を感じながら、アスカは目を閉じた。
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