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第1章 三角関係成立!?
7時50分ピッタリに俺の家のインターホンは鳴る。俺は弟に急かされながらご飯を口につめて家を出た。
「待たせた!ごめん!」
「おせぇ…」
外で待っているインターホンを押した主は俺の幼なじみ。いつも少し遅くなるのに慣れたのかボソリとそう言うと先に歩き出す。
「お前時間厳守って言葉知ってっか?」
「ほんとごめん…」
「別に」
そう俺の前を歩くのは一条アスカという少し拗れた不良くん。俺とあまり一緒に行動しなくなった中学生あたりからもう不良だった気がする。
学校に行くまで全然話さないくせにいつも一緒に登校する。ほんと何の意味があるんだか。
「アスカ!」
「あ?」
「おはよ、お、今日も仲良く一緒に登校か?」
アスカに走りよってきたのはアスカのクラスメイトらしい生徒。俺とアスカをみてニヤニヤするとアスカの肩を叩いて先に学校へと入っていく。
「後でな!」
「うっせ」
「いいのかよ一緒に行かなくて」
俺が声をかけるとアスカは酷い剣幕で睨んでくる。こんなんなのになんで俺と登校するんだかほんとにわかんない。
「黙れ」
「うん、ごめん」
これの繰り返し。
「和樹、昨日みてぇに先帰ったら殺す」
「わかってるよ、待ってるから」
俺のことをいつも睨むくせに先帰ったり約束破るとこうやって怒るし。めんどくさくはないけど、アスカのことは本当にわからない。
俺たちはクラスが違って、俺は2-2でアスカは2-1。だから教室前で別れてそれぞれのクラスへと行く。どうやら今日俺のクラスには転校生がいるようで少しザワついていた。
チャイムがなり先生と共に入ってきたのは白馬の王子様みたいなイケメン。女子はそりゃもう歓喜の叫びをあげて男子は絶望した。
よく少女漫画にあるイケメン転校生的な感じで今日の放課後には誰かに告白されているんだろうな。
「有栖川ありすがわ遥斗はるとです。最近ここに越してきたばかりでわからないことばかりなので教えてくれたら嬉しいな。よろしくお願いします」
想像通りのイケボに想像通りのイケメンな挨拶。想像通り女子の視線を独り占め。なんとも羨ましい。
「有栖川くんは窓側の1番後ろね」
まさかの俺の隣。新しく机が置いてあると思ったらそういう事か。
担任に言われてスタスタとイケメンはこちらへ歩いてくる。近づいてくるほどその顔のイケメンさが伝わるからもうこれ以上近くによって欲しくない。
「よろしくね」
「お、おうよろしく」
眩し……俺もこんなイケメンに生まれたかったな。
「有栖川くんよろしくね、わからないことたくさんなら私達で教えるよ!校内のことも任せて!」
「放課後暇だったらここあたりの美味しいカフェとかも紹介するし、どう?」
早速一軍女子がイケメンに話しかけている。あんなロックオンしたキラキラ目付きを俺も向けられたいもんだ。
「ありがとう、じゃあお願いしようかな」
ここから始まる恋の予感ってか?イケメンは明日には彼女が出来て両手に可愛い女の子引き連れてるんだろうな。
朝のHRが終わりイケメンの周りに女子が集まり男は教室の隅の方に追いやられてしまった。
「久我、もう俺たちの高校生活に甘い恋なんて訪れねぇんじゃね?」
「来ないだろ、女子みんなあのイケメン様に恋してるよ」
クラスのいつメンである明智あけちらと一緒にそのイケメンを取り巻く女子たちを眺めながら話す。
「あー…なんでよりによってうちのクラス…」
「いやでも隣のクラスでも女子がそっちに全部流れるだろうが。あの何様俺様一条様がいるからな」
明智達に噂されるのは朝一緒に登校したアスカ。アスカはガラは悪いものの顔立ちはかなり良く、入学当時は教室までアスカを見に来る女子がたえなかった。今はあの性格だから収まった方だけどあれがまたかっこいいとか言う女子も多いそう。実際、俺も何度かアスカが告白されているのを見たことがある。
「久我、お前幼なじみなんだっけ?なんかあいつの恥ずかしエピソードとかねぇの?」
「ないない。昔からあんなん」
「えぇ、小さい頃からイケメンってか…」
昔からアスカは変わらない。あの性格も顔立ちも、ほんと昔から変わらない。
アスカのかっこ悪いところも、今も昔も変わらない。
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