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「ここ。今じゃ誰も使ってないんじゃね?倉庫だと思うんだけど多分出入りしてんの俺だけ」
そう案内したのは学校の校舎3階にある、1番隅の教室。それなりに奥行はあるものの、物や棚が多いせいか少しごちゃついている。
だけど最近は俺が出入りして自分の好きなように変えているので机も椅子も置いてある。物置部屋のせいか机や椅子とか色んなものが揃ってるからな。
「へぇ、ここいいね、鍵もかかってないし……先生たちここの教室のこと忘れてんじゃない?」
「それあるわ、まじ俺しか出入りしてないと思う。始めて入った時はホコリ被ってたし」
「じゃあ俺たちだけの穴場スポットだね」
嬉しそうに微笑むイケメンをみてこっちまで嬉しくなってきた。中へ入り俺たちは机を挟んで座る。
「いただきます」
「いただきます…」
はるの弁当を覗くと、そこに可愛いキャラ弁があった。俺の茶色い不健康そうな弁当とは真逆で栄養もありそう。
「自分で作ってんの?」
「うん、こういうのが好きでさ。かずは……ちゃんと栄養も摂らないと、はい」
するとはるは俺の弁当に自分の弁当に入っていた野菜を乗っけてきた。
「俺いらないよ…野菜嫌いだし」
「だめ。ほら、あーん」
イケメンは野菜を俺に食べさせようと口元へ持ってくる。こんな状況になってはなんでか断れず俺は口を開けてしまった。
「……美味しいけど」
「良かった…ね、明日から俺が弁当作ってこようか」
「は?いや、申し訳ないし」
「そんなことないって。その代わりかずはこうやって毎日一緒にご飯食べて欲しいな」
イケメンにこんな嬉しいセリフを言われて、首を横に振れるものが存在しようか。いやしない、断言する。
「わかった…」
「やった!ありがとうかず!」
俺に抱きつこうと身を乗り出すはるに驚いて俺はつい避けてしまった。
「あごめん、俺抱きつく癖があって…」
「それ女子にしたら絶対勘違いされんぞ」
俺だからいいもののと思ったが、俺でも今のはドキッとしたわ。これじゃ女子はイチコロだな。
「それなんだけどさ…女の子は好きなんだけど、すごいベタベタしてきたりずっと話しかけてくるから疲れちゃうんだよね俺」
「へぇ、俺からしたら羨ましい限りだけど。イケメン様はそんなお悩みがあるんですね」
「イケメン様って……でも、俺かずみたいな男友達なんて中々出来なかったから、嬉しくて。かずなら抱きつかれても大丈夫かな」
「はぁ?俺は抱きついたりしないから」
いちいち言い方が紛らわしいような気がするこの男、こちゃよく勘違いさせるやつだ。俺でも勘違いしそうなんだから。
それにしても、ご飯食べててもイケメン……ご飯もイケメン、どこからどこまでもイケメンしやがって。
「はる、部活は何か入んのか?」
「ううん、帰宅部。かずは?」
「俺もだけど」
「一緒!じゃあ一緒に帰ろうよ、そうだ、俺の家来るといいよ」
あまりに急すぎる誘いだけど嫌ではなかった。けど……
「ごめん、他にも帰る人がいて…」
「じゃあその人も一緒に、だめかな?」
俺の顔を伺うように覗き込んできたもんで俺は断りずらかった。
「きいてみるけど、多分…というか、はるが嫌がるかも」
アスカは多分怒るだろうなとわかっているはずなのに俺は断れなかった。これもこのはる様がイケメンなのが悪い。
「俺は大丈夫。かず、今週末空いてる?ここらへんのこと全然知らないから教えてくれないかな」
「え、いいけど」
「よし決まり!」
こうして、この昼休みで俺たちは色んな約束をしてしまった。
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