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「僕はまだ何年こっちにいるのかめどが立たないから、産んでくれるならここで、ということになると思うんだけど。病院に行ったり産院に行ったりするのははのちゃんだから、はのちゃんが決めてい――」
「私駿ちゃんの赤ちゃんバリバリ産むからそれで帳尻を合わせよう!」
「帳尻? 何の?」
拳を握り締める。
「でもちょっと待って。ちょっとだけ待っててね」
駿が優しい表情で頷く。
「私、もうちょっと勉強するから! こどもが困らないように。ドイツ語とドイツ社会がどういうものなのか勉強して、できることなら幼稚園だって小学校だって普通に通わせてあげたいから!」
「うん」
「だから……、お母さんの私がしっかりするまでは。もうちょっと、時間をください」
「もちろん」
駿を抱き締めたくなったが、残念ながらふたりの間には夕飯の食卓がある。
「三年以内にはなんとかするから。三十になる前にはひとりめを出産できる状況にしたい!」
「いいね。夢が広がるね」
「でも欲しい。絶対欲しいよ駿ちゃんの赤ちゃん」
「ありがとう。すごく楽しみだよ」
手を伸ばす。その手を駿がつかんでくれる。
「赤ちゃんはおあずけだけど、夫婦の営みは……! 夫婦の営みはしよう!」
「ふふふ、明日はお休みだね」
「ひゃー! やったー!」
ふたりはしばらくそんな話をしながらのんびり食事をした。楽しい。なんだかんだ言って、新婚生活はうまくいっている気がするので大丈夫だ。
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