レッテル

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レッテル

林道高校に入学した京介、大智、陽翔、良は屋上で昼ご飯を食べていた。春のポカポカとした日差しに桜の花弁がひらひらゆっくり舞う。のどかだな〜とそう思いたいし、言いたい。もう一度言う。言いたい.......あぁ、こんなことになりたくなかった、ここにいる4人はそう思っている。ていうか、そう思わざるおえない... 「大智さん、パン買ってきました!」 「京介さん肩お揉みします」 「なにかやることありませんか?」 「さっき肩にぶつかったヤツら絞めますか?」 「「「「はぁ〜」」」」 ざっとここには10人くらいチンピラが居る。4人の目の前に正座する奴もいれば、立って警備員してる奴まで、言わゆる舎弟と言うやつだ。良はこの状況にイライラし、とんとんと人差し指で貧乏ゆすりをする。 「なんで君たちいるの?来ないでって言ったよね?ねぇ?日本語通じてる?もしかしてアラビア語とかロシア語の方が良かった?」 「まぁ、そんな責め立てんとな?良、貧乏ゆすりはあかんで?」 「うるさい、出ちゃうんだよ」 「俺が手握ってあげるッスよ」 と、陽翔が良の手を握ろうとする。 「さわるな、鬱陶しい」 「酷いッス!!」 「お前らさっさと飯食えよ」 そう言った大智は舎弟の1人に肩を揉ませゆうゆうと弁当を食べていた。見下した顔で。 「そんな顔に言われても説得力ないで、舎弟に肩揉ませて。あの入学式前が嘘のようやな」 「バッカ、掘り返すんじゃねぇよ!」 「ほんとにそうッスよね〜、何をほざいてたんだか」 「バカがさらにバカの顔になってるよ大智」 「そこまで酷く言うなよ!!」 わんわんギャンギャンと屋上で騒ぐこの暖かい空間は先程までとは大きく違う。と言うと、先程までここは今の舎弟達の溜まり場となっていた。そこに運悪く鉢合わせたのがこの4人である。 「おお?何しに来たんだあぁ?」 「ここは俺らの場所なんだよ。出てけやゴラァ!!」 2人の男子生徒が京介の前に立ち脅してくる。後ろに方にいる大智はお腹が空き過ぎて少しイライラしている。陽翔に至ってはニッコニコの笑顔で「別んとこで食べないッスか?」と提案を持ちかけ、良は陽翔の後ろに隠れ、めんどくさいと言う顔をしている。 「それは悪いことしたな。ごめんな?許して?」 と京介は去ろうとする。 「えーー、また探すのかよ京介。めんどくせぇ、俺腹減ったぁ〜」 大智が駄々をこね、いかにもお腹減った!もう食べたいと顔が訴えかけている。 「そう言われてもしゃあないやろ?先客がおったんやし」 「もう、食うし!!無理だ!!!歩けねぇ!!」 「長身が言うなよ、先客がいるからダメだって言ってるだろ」 「良の言いたいことも分かるッスけど、昼休みもう時間ないしここは大智に賛成ッス」 「陽翔!!やっぱりお前は分かってくれるって信じてたぜ!」 「大袈裟ッスよ」 「はぁ〜、しゃあないな。っていうことなんで、少し端っこ貸して貰えん?」 京介がお願いのポーズを取るも、これは呆気なく失敗終わる。 「んだと?聞いてなかったのか?ここは俺達のなんだよ」 「でしゃばんじゃねぇよ!!お前らぶっ殺すぞ!!!」 と言う言葉に後ろのチンピラ達は攻撃体制に入る。すかさず口を出してきたのは大智だ。 「はぁ?お前らの方だろ、でしゃばってんのはよう??ここは皆の屋上なんだよ?分かってんのか?俺は腹が空いてんだよ?食わせろやゴラァ」 「正論は言ってるッスけど大智お腹空きすぎてもはやジャ○アンッスね」 「うっせぇ、黙ってろ」 大智の怒りが頂点に達した。 「お前らなんなんだよ?どっかで番張ってた奴か?どこ(ちゅう)だ?」 「あぁ?何言ってんだ??ハイチ⚪︎ウだ!!バカ野郎!!!」 「お前の方が馬鹿だよ、何言ってんの?恥ずかしい」 良が呆れている中、そこにノっかってきたのは陽翔だ。 「えっ?それじゃ俺は君に夢中ッス!キラーん」 「はぁ?コイツら何言ってんだよ!どこ中だって聞いてんだよ!!てか、交換音自分でつける奴いるかよ!!!」 「なるほどな、そこまで(ちゅう)にこだわりがあるんやったら俺はナイストゥーミーチューや」 「ごめん、京介までボケ始めたから殴ってきていいよ。君たち」 「もうなんなんだよ!!お前らぁ!!!」 良はもう諦めて、隅で座って休み早く終わるのを待つことにした。 「京介、僕はもうツッコミなんてやらないからな?」 「ごめんごめんつい、癖なんや」 この空間に馴染めないチンピラ達はもはやこのノリに置いてきぼりだ。それを悪く思ったのかチンピラの1人が声を荒らげた。 「てめぇら、もういい!!コイツら潰すぞ」 その掛け声で、チンピラ達はいっせいに4人に襲いかかる。 「ほら、怒らせたッスよ〜」 「大智責任持って相手してよ」 「なんで俺なんだよ」 「元はと言えばお前が駄々こねるからやろ?」 「チッ....仕方ねぇな、おらお前ら来いよ」 「舐めやがって!!」 大智は四方八方飛んでくる拳を手で受け流し、その都度に腹に1発づつ入れていく。 「ガハッ!!!」 「グハッ!!」 「おいおい、まだ1発じゃ物足りねぇだろ?オラ!立てよ!!」 その場に倒れているチンピラ達は1発目のあまりの衝撃に動けないでいる。鉛のように重く、冷たい拳はまだ腹の中でヅキヅキと痛み、ドクドクと心臓が高鳴る。 「大智、気が立ってるか知らないけど可哀想だろ?やめろ、もうそいつらは立てないし、さっさとご飯食べよ」 「それもそうやな、さっさと食べよ!時間ない!」 「...チッ」 大智は周りのチンピラを見渡してから、京介達の元に戻り、その場に座ってご飯を食べ始める。続いて、京介、陽翔、良も大智の近くに座り弁当食べる。 「はぁ〜、もう俺帰りてぇ」 「そんなこと言っちゃ親父に叱られるッスよ」 「わからんくもないけど、あと3年やで?まだまだ序ノ口ちゃう?」 「こんなこと中学でもあったでしょ。これくらい耐えなよ」 「あぁ〜うぜぇ〜、もう絡まれたくねぇ」 「あっ、大智!卵焼き貰うッスね!」 「っておい!!俺の取るなよ!そっちのハンバーグ貰うからな!!」 「あー!俺のハンバーグッス!」 「そこはお互い様やろ〜」 そんなこんなしていると、チンピラ達が起きてきた。 「げっ、起きてきたよ。また暴れるの??嫌なんだけど」 「主に俺だけしか殴ってねぇだろ!!」 「次殴ることになったらまた大智頼むでー」 のそのそと起き上がり、チンピラ達は何故か中央に集まって会議をしている。 「何やってるんッスかね?」 「作戦か?」 「さすがにちゃうやろ?」 「ここ男ばっかでむさ苦しいんだけど」 数分すると、チンピラの代表がこちらに来て目の前で正座する。続いて、後ろのチンピラも正座した。 「なんやなんや??えらい、キッチリして」 「あの、先程はすいませんでした!!」 チンピラ代表が土下座で謝り、後ろのチンピラも一斉にする。 「俺たち、先程の立ち振る舞いと拳にとても感動しました!!是非、俺たちを舎弟に...!!」 「どうするッスか?」 「どうするも何もやな〜うーん、こいつらは大智に着いてく気なんやろ?だったら大智に聞こや」 「えっ、あっ、いや!!その、俺たちは皆さんに着いていくつもりです!皆さんは、ご友人のようなので」 「いきなり敬語めっちゃ上手いッスね。でも友人なのは確かに本当ッスよ。幼馴染みだし、実際やり合うと決着着こうにも俺たち得意分野それぞれ違うっスからね〜仲間意識大切ッス」 「せやんな〜」 「これどうするの?僕舎弟なんて持ちたくないんだけど!また中学に逆戻りだよ」 「確かに、それは嫌だな」 「そうッスね」 「普通の友達欲しいな」 「でしょ?」 「そこをなんとか...」 「しつこい男は嫌われるよ」 「それ、別れる時女の子みたいッスよ」 「うるさい!!!」 と、まぁこんな感じで数分すると個人個人で自分の有能さを伝えたり、役に立ちます!!と威勢を上げて肩もみ、膝もみ、腕もみといろいろしてくる。まるでテレビショッピングを見ているみたいだ。商品の宣伝がスゴい。それが今に至る。 キーンコーンカーンコーン 「あっ、予鈴ッスね」 「昼飯も食ったし行くか」 「えっ、大智さん達は授業受けるんですか?」 「当たり前田のクラッカーやで、勉学に励んでこその若人や。それに受けんかったら俺らは確実に、親父に殺される」 「京介、それ古いよ。何前田のクラッカーって。父さんに殺されるのは僕もごめんだからね、厳密的には体が使い物にならなくなるだけだけど...」 「その、親父さん達はそれだけすごい人ってことですよね?強いってことは、何されてるんですか?皆さんの親父さんは何かプロのボクシング選手かプロレスラーですか?」 ワクワクとこちらを見る舎弟達。 「ははっ、それだったらまだいい方ッスよ。俺たちの方がまだ強いッス」 陽翔は怪しげな笑みを浮かべ、舎弟達を見つめる。そこで屋上を轟轟と轟く風が吹き荒れる。髪が乱れ、服の端は少し風になびく。シーンとそこは風の音しかしない静かな場所とかす。 「俺たちの親父は極道者や、裏社会の四大極道って言ったらわかりやすいやろ?そこのや。俺が桜爛組や」 「俺が朧柊組」 「俺は楓幽組ッス」 「僕が蘭貂組」 「まぁ、こんな感じでわかりやすくに説明したけど何となく話が着くやろ?」 「......」 舎弟達はポカーンと口を開け、こちらを見ている。 「「「「「「えぇぇぇぇ!!!」」」」」」 「うるっさい!」 「まぁまぁ、あっ、時間ヤバいッスよ!!」 「やべぇ授業始まってるじゃねぇか!!」 「はよ行くで!」 4人はその場にいた舎弟を気にも止めず、それぞれの教室に急いた。一方その場に残された舎弟達は、なんてことをしてしまったのだと、今までの愚行をものすごく悔やみ、殺されるのではないかと恐れ、放課後4人の元へ行き、土下座で謝り、今後関わりを持ちませんと誓いを立てて帰っていったそうな。それは全校生徒の注目の的となり、4人の極道者というレッテルは即、学校中に広まった。 「「「「なんでこうなるかな〜」」」」 4人の心の声ははるか彼方の、陽気な春の空へと消えていった。
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