梅雨

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梅雨

雨がさらさらと降る。優しい雨だ。今いる奥座敷の縁側は、紫陽花たちが彩る。鳥は木々に泊まり、雨をしのぎ、晴天の兆しを待つ。 月は6月中旬のこと、春空は曇天へと変わり、あのからはひと月以上経とうとしていた。今だ消えぬ、極道者と言う肩書きに、皆を怯えさせているのだと思うと、もうこれも慣れたことのように4人は感じていた。 「やっぱり言ったのがまずかったんッスかね〜」 「いや、それはええんとちゃうか?いずれはそう名乗ることになるかもしれんのやし、その上で付き合いになるんちゃうか?」 「はぁ〜めんどください」 「だな、めんどくせぇー」 縁側でくつろぐ、話した順から陽翔、京介、良、大智は学校が休みということで、昔から4人の遊び部屋として使っていたはなれに来ている。母屋の方は組長たちの会合場所となっており、昔から会合があるたんびにここのはなれで遊ばせたものだ、と毎回のように語る...組長たちが。主張が激しい組長達も今日はここにいない。出張と言うやつで、今は中国にいるとかいないとか...。 今日集まったのはただたんに暇だったからだ。4人はやることが無いとよくここに集まる。 「あぁ〜暇だ〜、暇すぎる。暇すぎて死にそう」 「そう暇、暇、言うな。鬱陶しいわ...そういえば、あれ楽しみやな〜遠足!」 「うん、キノコ収穫が出来るからものすごく楽しみだよ」 「相変わらずジメジメだな」 「うっさい。大智に言ってない!」 「まぁまぁ、喧嘩はダメッスよ。俺は弁当が楽しみッス!やっぱりこういう時だけ豪華なのがいいんッスよね〜。なんか、色がちょっと華やかにならないッスか?」 「そんなとこ気にしたことないわ。女子力高すぎやろ」 「そういうのは女子力に入らないッス!」 ぶーぶー!!と陽翔が言っているとスパーンと襖の開く音がした。 「坊ちゃん方!!遠足があるんでごじゃいますかぇ!!!」 「「「「トメさん!!!!」」」」 そこに現れたのは、この家の管理をしてくれているトメさんだ。背が低くく、割烹着を着ているトメさんはこの家にあってはならなくてはいけない存在なため、組長たちが大変重宝している。その理由を子供の時に4人で聞いた事があるが、教えられたことがない。いつも若頭になったら話すよの一点張りだ。 「トメさんいつから聞いてたの?」 「すいません、良坊ちゃん。やっぱり言ったのがまずかったんッスかね〜からでごじゃいます。」 「いや、最初っからやないかい!!」 「トメさん暇なのかよ」 「暇じゃごじゃいません。今日はこの家の掃除をしてましたので、それはもう隅から隅まで...そうしていると、奥座敷から声が聞こえてきたんで、坊ちゃん方かな〜と思い話しかけようとしましたら、少し重い空気で声がかけずらく....そして、少しあとに出た次第でごしゃいます」 「いいんッスよ!そんな重いのじゃないから大丈夫ッス!!」 「まぁ、良かった。それより坊ちゃん方、遠足があるんでごじゃいましょう?...お弁当お作り致しましょうかぇ?」 「俺はそうして貰えるとええな」 「俺も!!」 「じゃあ僕も」 「それじゃあ俺もッス!!」 「はいはい、それじゃあお作り致しますね。重箱でいいですかぇ?」 「「「「うん!!!!」」」」 一週間後には遠足だ。どうなるだろうか...それは神様しか知らないかも? 「いえいえ、このトメめが知っているかもしれないでごじゃいましょう?ふふふっ」
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