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波乱の幕開け
ジャラ、ジャラ、ジャラ。
足を踏み出す度に音が鳴る。
その音を聞く時が、一番幸せだ。
これだけあれば、いくらになるか。
考えただけで、にやけが止まらない。
「随分と、ご機嫌じゃん。」
「ったり前。あんたも見てみなよ、この戦利品。」
船の上へと登る途中。
上から声が掛かってきたので顔を上げれば、飴玉を舐めながら頬杖をついて見下ろしている姿が見えた。
「今のあたしは気分良いから、分けてやるよ。」
「そりゃ、どーも。」
興味なさそうにそう答えるその様を見て、どうしてこの船に乗ってるんだと不思議でならない。
金にも、宝石にも、酒にも、ましてや女にも興味を示さない。
いつも怠そうにぼうっとして、飴玉咥えてる姿しか見た事がない。
「なぁ、律。他の奴らは?」
甲板に座り込んで、背負ってきた袋から戦利品を取り出しながら上にいる律に問い掛ける。
キラキラと光る宝石の数々が無造作に木の板の上に散りばめられる。
適当にその中から目についた宝石を掴んで、律に向かって投げた。
難なくキャッチした律は呆れたような目をしてあたしを見てくる。
「皆、とっくに待ちくたびれて寝てるよ。」
「ははっ、そりゃ悪い事したな。」
思ってもいない言葉を笑いながら言うけれど、もういつもの事で何も言われない。
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