足を止めてれば

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 あまりの驚きに時間が止まったように感じる。どうする? 他人のフリをして切り抜けるか? 他人の空似じゃないですかって。いや、でも嬉しい気持ちではある……そんな事をブワーっと駆け巡らせ、やっと出てきた言葉が 「ァ……ハィ」  だった。 「やっぱりな! いやあ! 奇遇やなぁ! 何年ぶりや?」 「五年……かな。ははは」 「高校の卒業式以来やから、そんくらい経つんかー。早いなー」 「ソッスネ」  一週間の疲労と謎の緊張で上手く言葉が見つからない。しどろもどろしていると、顔を覗き込まれた。 「……もしかして、覚えてない?」 「いやいやいやいやいや!! 覚えてる、覚えてる! 草加……だよね?」 「おお! 覚えてるやん!」  草加が声をあげて笑う。学生時代の面影がより強く見えて、どこか懐かしい。私はというと、照れくさくて小さく笑うくらいしか出来なかった。 「この後時間ある? 立ち話もなんやし、どっか店入らへん? 積もる話もあるし」  草加からの突然の誘いに驚いたが、明日は休みだし、どうせ帰ってもすることは無い。……断る理由はない、ってことで。 「じゃ、行くか!」  「せやな」と頷いた私は、草加についてゆく様に改札の方へと足を進めた。
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