足を止めてれば

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「魂、売りよったなぁ?」  草加が意地悪そうな笑みを浮かべた。 「売ってないよ!」 「『売ってへん』やろー」 「どうでもいいよ!!」  間もなくビールの注がれたジョッキが運ばれてきた。 「さてと。まずは平日を働きぬいたことに、乾杯!」 「……乾杯!」  カチンとグラスをあて、ビールを喉へ流し込む。仕事終わりはこの一杯!──とはよく言うものだけど、正直この苦味はまだ好きになれない。  それからは思い出話に華が咲いた。学生当時のお互いの話から卒業後についてまで絶え間なく話し続けた。草加は私と違って、今でも同級生達と繋がりがあるらしい。男友達四人と撮った旅行の写真や、草加と同じ陸上部の面々と行った海水浴の写真を見せてもらった。私と違って陽キャな彼ららしい良い笑顔だ。どれも楽しそうで、心底羨ましい。  他にも、名物先生の訃報や昔から続いていたカップルの結婚など、様々な節目にも立ち会ったらしい。 「え、呼ばれてな……」  と肩を落とすと、 「そもそも呼ばれた人数が少なかったから」  とフォローされてしまった。とはいえ、五年の間で随分と置いていかれた気がする。プチ浦島太郎状態だ。
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