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普段、無口で無愛想なあなたがマスクをした途端、饒舌になる。
目で話をするとき、いやでもあなたの目をまっすぐに見ることになる。嘘をつけないあなたは目で話をしてくれる。
優しい目の奥の光。心のひだを映し出す。
嘘を聞きたくないから何も言わなくていい。
ずっと待ち続けたその言葉も目で話をしてくれたら。それだけで。
会わない時間、次に会ったとき、マスクをしたあなたはどんな話をするのだろう、どんな言葉をつぐむのか、ひとり、妄想に沈んでいく。
それからこれも。
あなたの目で私の目を犯してほしい。目だけで感じさせてほしい。向かいあって座ったら、私の目が、あなたから逃げられないように視線で縛り付けて、そのまま、奥深くまで。
どんなふうに、どれほど乱れさせてくれるのか。沈黙の薄暗い灯りの下で。
大人にしかできない秘めごと。忙しいあなたと過ごせる時間は限られている。だからこそ、いつでも、どこでも、誰にも気づかれないままにひっそりと。
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