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響き渡る轟音。
叩きつけられた重厚な刃はその頭蓋を容易く砕いた。
展開された魔宮の石畳が戦斧を振り下ろされたところを中心に大きく陥没する。
魔人の少女の影から現れたのは牡牛の頭に巨大な角を持った半人半獣の魔物。
全身が濃紺の毛皮に覆われ、その大きさは中腰の姿勢でもゆうに3メートルを超えていた。
血に染まった赤黒い腰布を身に纏い、無骨な鎖で連ねられた無数の人の頭蓋骨が首から全身に巻き付けられていて。
左右に巨大な戦斧を握り、固く閉じられた両目からは血涙を流している。
シャルと呼ばれたその魔物は巨体に似合わぬ俊敏さで魔人の少女と連携し、瞬く間に赤いスケルトンを討ち倒していった。
胴をまっぷたつに断ち、相手の剣ごとその体を袈裟に斬り伏せ、分厚い蹄でその体を粉砕する。
「やれる! これなら勝てるぞ!」
「なんて強さだ」
「やっちまえ!」
凄まじい勢いでスケルトンを蹂躙するその姿に冒険者達は沸き立っていた。
圧倒的攻勢。
赤いスケルトンは下からの奇襲も交えながら次々と現れるが、魔人の少女とその魔物のコンビは次々にそれらを撃破していった。
敵の魔人を手のひらに乗せたスケルトンも、その体をバラバラに砕かれる。
その間際に魔人は後ろに跳んだ。
壁からスケルトンの腕が現れ、魔人はその上に着地する。
「こっちとは真逆のボス特化型。しかも自己強化でボスとタッグを組んで戦うタイプの魔人。そういう疲れるの俺嫌いなんだよねー」
魔人はそう言って肩をすくめた。
眉間にしわを寄せながらため息を漏らす。
「諦めるんだな。貴様に勝ち目はない」
キールが魔人に言った。
その懐から魔人の少女の首にしているのと同じ首輪を取り出して。
「C難度の分際でよくも手間取らせてくれたな。C難度の攻略で犠牲を出すなど他の連中のいい笑い者だ!」
キールは歯軋りし、魔人を睨み付けながらつづける。
「本来なら私の剣でむごたらしく殺してやらないと気がおさまらないが、今回の任務は捕獲作戦だ。後でせいぜいかわいがってやるわい」
「嫌だよ。俺は疲れるのも痛いのも嫌いなんだ」
魔人は即座に拒否を口にした。
赤いスケルトンの1体が魔人の少女からキールの方へと振り返り、キール目掛けて剣を振り下ろす。
キールは舌打ちと共に剣の柄を握った。
抜き放たれた刃は鋭い一閃となり、振り下ろされたスケルトンの剣を両断。
次いでキールは高く飛び上がるとその首を寸断する。
その姿を見て冒険者達から歓声が上がった。
「さすがキールさん! 従えてる魔人もやべぇがキールさんもやっぱり強い!」
「さっすがA難度攻略者……!!」
「キールさんは最強だぜ!」
そんなキールと冒険者達をディアスは見て。
「あ、あのおっさん口だけじゃなかったんだ」
ディアスが思わず呟いた。
キールは討ち倒したスケルトンを踏みつけて。
「……これが最後の警告だ。おとなしく降伏するがいい。抵抗すればするほど後で待つ私のしつけは厳しくなるぞ?」
キールの言葉に魔人は顔をしかめた。
魔人はキールから視線を逸らすと、魔人の少女とその魔物が赤いスケルトンの群れをなぎ倒すのを見る。
「仕方ねぇなー」
気だるげな呟き。
だが次いで魔人は目を見開き、口許に大きな笑みを広げて。
「俺のダンジョンに────」
その時、広間の壁から無数に剣を握ったスケルトンの腕が突き出した。
振り上げられた剣が一斉に広間の床に叩きつけられる。
「ようこそ」
そして魔人の言葉と共に広間の床が陥没。
冒険者達は空中に投げ出された。
「下の階層だと……!?」
キールが驚きの声をあげる。
「なるほど、見当たらないと思ったら下に隠れてたのか……!」
ディアスが言った。
落下する瓦礫を跳び移りながら周囲を見回して。
土作りの洞窟から、白い無機質なダンジョンへとその様相が変わる。
その先には一人の少年が佇んでいた。
落下する冒険者達を見上げるその瞳も赤い光を宿している。
そして冒険者達は床に投げ出された。
半数は瓦礫の落下に巻き込まれ、戦える状態にない。
魔人の男は少年のそばに飛び降りてきた。
「ようこそ。俺の『侵せぬ盾』へ」
「そして改めてようこそ、僕の『染血の骸塚』へ!」
魔人の男に続いて魔人の少年が言うと、頭上が土の天井に覆われた。
そしてその天井からは上半身だけを乗り出して。
先程まで交戦していた赤いスケルトンよりもさらに巨大なスケルトンが姿を現す。
その大きさは上半身だけで10メートルはあった。
頭の左右に黒い大きな巻き角を持ち、8つの腕が肩、胸、脇腹、腰から伸びている。
キールはその姿を見ると顔を青ざめて。
「ボスクラス。それも、このスケルトンは過去の攻略で見たことがある。た、確かA難度の……?!」
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