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ディアスは魔物目掛けて剣を突き出した。
剣の切っ先が魔物の喉元から胴までを貫く。
だが、それと同時に周囲から雄叫びが連なった。
藪や木陰から魔物が次々とディアス目掛けて飛び出して。
前方から2体。
左から1体。
後ろから3体。
ディアスは素早く魔物の数を把握すると、その対処に動く。
ディアスは貫いた魔物ごと剣を叩きつけ、飛び出してきた魔物の1体の動きを止めた。
すかさず剣を引いて魔物から刃を抜く。
そしてディアスは振り向き様に一閃。
さらに刃を返して袈裟に斬り上げた。
ディアスは2体の魔物を斬り伏せると剣の魔力を解放する。
「ソードアーツ『裂き乱る刃風、鮮血の花園』!」
ディアスの握る剣が陽炎のように揺らめいて見えて。
ディアスはその剣を横薙ぎに一閃。
振るわれた剣は直視できない風の刃を拡散させた。
瞬く間に拡がる刃風。
周囲の魔物の表面を風の刃が走ると、触れた先から魔物の身体がほつれるように裂けた。
刃が走り去ると、一拍の間を開けて無数の血飛沫が舞う。
ドサドサと音を立て、バラバラになった魔物の死体が周囲に転がった。
「早くアーシュを見つけないとヤバいな。群れに遭遇したらあいつの力量だと逃げるのも難しいはず」
ディアスは一度剣を鞘に納めると、別な剣を抜いた。
再び闇に呑まれた森の中を疾走する。
「────ケケケ。嬢ちゃん、気づいてるかぁ?」
アムドゥスがエミリアに訊ねた。
「うん、ずっとつけられてるね。それも複数。群れで動く魔物なのかな」
エミリアは木の側面を蹴ると上に跳び上がった。
木の枝の上を次々と跳び移っていく。
「アーくん! どこー!」
エミリアは追手の気配を警戒しながら、アーシュの姿を探す。
「ねぇ、アムドゥスも上から探してよ」
「俺様は夜目が利かねぇからな。この暗い森ん中だとまともに飛べねえし、木が密集し過ぎて森の上からだとなんも見えねぇだろうよ」
「アムドゥスって鳥目なんだね」
「いや、俺様の顔見ろよ。鳥だぞ」
「鳥だよね。……ふと思ったけどアムドゥスって魔王の使い魔なんだっけ」
エミリアは強く枝を蹴ると大きく跳躍した。
「ケケ、おうよ」
アムドゥスが自慢げに答える。
「使い魔って雑魚とは違うよね? かといってボスっぽくもないなーって。魔王クラスが召喚するボスとかならもっと強そ────」
刹那、エミリアの耳元で風切りの音。
アムドゥスがくちばしで思いっきりエミリアの頭を小突いた。
「いったぁい!」
エミリアは木の枝を踏み外すと地面に落下。
しりもちをついたエミリアはお尻をさすって。
「アムドゥス、危ないじゃない」
「嬢ちゃんこそ、この俺様に向かってなんて失礼な事言うんだ!」
アムドゥスは憤慨。
頭巾の中で羽をバサバサと振るう。
「俺様はなぁ、そんじょそこらの魔物とは違うんだ! そもそも嬢ちゃんは俺様の戦闘形態見たことねぇだろうがぁ!」
「え、戦闘形態とかあるの? なにそれ見たい」
「ケケケ! 嬢ちゃんには見せてやらん!」
「えー、ケチー。あたしてっきりアムドゥスって戦えないんだと思ってたから一緒に行動してたのに。戦えるんなら二手に分かれようよ。アーくん早く見つけないとだよ?」
エミリアはスカートの土ぼこりを払いながら立ち上がった。
「ケケ、人間のガキがどうなろうと知ったことか。俺様は能力の安売りはしないんだよ」
「アムドゥスって時々いじわるだよね」
「ああん? むしろ俺様が優しくなんてしたことあったかぁ? 俺様は常に俺様のためだけに動く、利己主義の塊よ」
「けけけ。そーやって、すぐ嘘つく」
エミリアはランタンで周囲を照らしながら言った。
ランタンに照らされた先には今までと変わらず森が広がっていて。
周囲からは獣じみた声が大小無数に響いている。
────その唸りに紛れるように。
エミリアの背後から音を殺して忍び寄る影。
その影はエミリアを射程に捉えると叫んだ。
「ソードアーツ『加速する剣、時をも越えて』……!」
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