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少年少女達は一度大きく距離をとった。
その視線の先ではエミリアを中心に森の景色が塗りつぶされて。
現れたのは円形の石畳とその左右に並ぶ黒い燭台。
燭台には紫色の炎が灯り、辺りを不気味に照らし出す。
エミリアはその手に青いハルバードを召喚した。
「陣形を組め」
リーダー格の少年が言うと、周りの少年少女は配置についた。
リーダー格の少年を筆頭にその左右に背の高い少年と坊主頭の少年。
その後ろに最年少の少年、最後尾に少女と並ぶ。
少女は携えていた杖をかざした。
「スペルアーツ『速度強化』!」
少女の発動したスペルアーツが彼女の杖の触媒を通して増幅されて。
効果を数倍に高められた魔法がパーティー全体に付与された。
彼らの体を緑色の光が包む。
「ケケ、ガキの集まりのくせにちゃんとバッファーがいんのか。単体だと補助程度のスペルアーツも杖のブーストがあればそこそこ化けるぜぇ? バフをもらって反応速度、身体速度だけなら無強化のB難度攻略者に匹敵する」
「そこから他のバフを重ねがけしても杖でブーストを維持できるスペルアーツは1つ。総合値でB難度攻略者に満たないのならあたしの敵じゃない」
「スペルアーツ『筋力強化』! 『武装研磨』!」
少女はさらにスペルアーツを発動し、パーティーに重ねがけした。
少年少女を包む光が緑と赤で点滅し、武器に黄色の光が纏う。
「『神秘を紐解く眼』」
中衛を担う最年少の少年はエミリアとその魔宮を観察する。
「……魔宮にギミックはなし。ボス部屋のバフ効果が高めなので魔人本体の動きに注意してください。ボスや雑魚の召喚による奇襲にも注意を!」
「ちなみにステータスは? どんくらい強い」
坊主頭の少年がエミリアから視線をはずさずに聞いた。
「比較対象がなくて答えがたいですが…………とにかく強いです!」
「あいよ」
坊主頭の少年は答えた。
その額から冷や汗が滲んでいる。
「いくぞ」
リーダーの掛け声と共に前衛の3人は駆け出して。
「スペルアーツ『魔力流出』」
「スペルアーツ『魔力流出』」
「スペルアーツ『魔力流出』」
同時に武器にスペルアーツの効果を付与した。
「スペルアーツ『魔力吸収』」
中衛の少年がリーダー格の少年の剣にさらにスペルアーツを重ねがけする。
エミリアは貫かれた肩を庇いながらも、片手でハルバードを軽々と振りかぶった。
迫り来る3人の少年達に向けて横薙ぎにハルバードを振るう。
即座に反応する3人。
左右の2人は飛び出すと武器を構え、エミリアの攻撃を受け止めた。
それと同時にリーダー格の少年が地面を蹴って。
彼はハルバードの下を潜り抜けると、エミリア目掛けて長剣を振るう。
その刹那。
エミリアはハルバードを握る手に力を込めると、力任せにハルバードを振り抜いた。
攻撃を受け止めていた少年2人が吹き飛ばされる。
「────っ!?」
「────!」
2人が驚きの声を漏らすより早く。
エミリアは振り抜いたハルバードの柄を使い、自身に迫る長剣を受け止めて。
すかさずエミリアはリーダー格の少年のみぞおちに鋭い蹴りを放った。
体をくの字に折りながらその身体は後方に吹き飛ばされる。
一瞬の攻防で3人の少年はエミリアの魔宮の外にまで吹き飛ばされて。
少年2人はエミリアの前方、最年少の少年と少女のいる方へ。
リーダー格の少年はエミリアの斜め後方へと飛ばされる。
長身の少年は受け身をとったが、坊主頭の少年は背後の木に叩きつけられた。
くぐもったうめき声をあげる。
リーダー格の少年は身をひるがえすと着地。
みぞおちを片手で押さえながらもまたエミリア目掛けて走り出した。
「リカバリー!」
リーダー格の少年が叫ぶ。
「はい! スペルアーツ『活性治癒』!」
少女は回復効果のあるスペルアーツを杖の触媒によって強化。
前衛3人の傷を癒す。
「スペルアーツ『速度強化』」
少女はすぐさま『速度強化』をかけ直した。
杖の触媒によるブーストが切れたバフを再びブースト状態にする。
長身の少年と坊主頭の少年もリーダー格の少年に続いて駆け出した。
「あれやるぞ!」
「あいよ!」
2人の少年は剣の魔力を解放する。
「ソードアーツ『激流の障壁、我が身を護れ』!」
剣の切っ先を地面に突き立てて────
「ソードアーツ『毒せ、苦悶の一撃』」
剣から猛毒の障気が溢れ出して────
「エミリア、あれちょっとまずいぞ!」
アムドゥスが声を上げた。
突き立てられた剣から湧き上がる水流の壁。
そこに猛毒の障気を纏った剣が振り下ろされた。
瞬く間に水が障気に侵されて毒々しい色に染まって。
障気を湛えた水の壁が濁流となってエミリアに押し寄せる。
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