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アムドゥスはすぐさまエミリアのもとへ戻った。
後退しながら人面の魔物と睨み合っているエミリアとアーシュ。
アムドゥスは2人の前で羽ばたきながら早口で言う。
「ケケ。エミリア、予定変更だ。人間のガキ共も聞け! 赤蕀の魔宮の展開域がすぐそこまで迫ってる。俺様達の仲間が時間稼ぎをしてるが進行のペースからしてもうもたねぇ。生き残りたきゃ手を貸せ」
アムドゥスの言葉に少年少女達は訝しんで。
「見え見えの嘘だ」
「赤蕀の魔宮の展開域はここからだと森を抜けてから馬で走って5日はかかりますよ」
「魔物め。騙そうったってそうはいかねぇぞ」
「ありえないわ」
「魔物の言うことを信じるとでも?」
「……ケケケ、話を聞けよ。俺様達は確かに魔物と魔人だが野良じゃねぇ。聞いたことねぇか? 魔人を使役する冒険者の話をよぉ。俺様達は冒険者の味方よ」
アムドゥスは少年少女達の協力を得るため嘘を交じえつつ話を続ける。
「ディアスは冒険者だ。装備もできねぇ剣を馬鹿みたいに10本も担いだ魔人がいるか?」
「……そこが理解できない。武具の複数所持をしてるような低級冒険者が魔人飼いなんてできるか?」
リーダー格の少年が言った。
「低級? ケケケ、あいつは今魔王クラスの魔宮の拡張を足止めしてるんだぜぇ? お前さん方も聞いたことくらいあるだろうよ。『一撃必殺の赤』、『連撃の青』、そしてそいつらに連なる最後の『白』。10の剣を携えた勇者。無尽剣『剣の嵐、無窮に至りて』のディアスの名をよ」
少年少女達が互いに視線をかわした。
「考えてみな。俺様達が人間をこっちから襲ったりしたか? 勇者サマの指示で危険を冒して迷子のガキを探しにきてやったんだろうが。ケケ、分かったら手を貸しな」
リーダー格の少年は人面の魔物とアムドゥスとを交互に見て。
「分かった」
「んじゃ早速だがうちの嬢ちゃんの解毒はできるか?」
リーダー格の少年は少女へと目配せした。
「スペルアーツ『解毒活性』」
少女はすぐに解毒のスペルアーツを唱えた。
青い光がエミリアの周囲を瞬くと、みるみるその体から毒が消えていく。
「スペルアーツ『活性治癒』」
さらに少女はエミリアの傷を癒す。
スペルアーツでは深い傷までは治癒させる事はできないが、それでもエミリアの顔には血の気が戻った。
エミリアは手足の感覚を確かめる。
「ボスがやられちまったが、いけるか? 嬢ちゃん」
「あたしなら魔物の召喚なしでも戦える。いけるよ、アムドゥス!」
「ケケ! いい返事だ」
エミリアはハルバードを構え、目の前にいる人面の魔物に得物の切っ先を向けた。
それと同時にアムドゥスはアーシュの肩にとまる。
「え、なんでおれの肩?」
「ケケケ、決まってんだろうが。俺様がアドバイスしてやろうと思ってな。見た感じお前さんハブられてて、あのガキ共との連携もろくにとれねぇんだろ?」
「うっ……」
アーシュは言葉を詰まらせた。
「今手持ちの剣は1本だけか?」
「うん。さっきので全部投げちゃったから」
「あっちに吹っ飛ばされた剣がある。それを取りな」
アムドゥスが顎で示した先。
そこには剣が地面に突き刺さっていた。
人面の魔物によってリーダー格の少年の手から絡めとられ、投げ捨てられた長剣だ。
「いや、勝手に使っちゃまずいよ」
「ケケケ。馬鹿か、くそガキ」
アムドゥスはくちばしでアーシュのこめかみをつついた。
「立ち位置を見やがれ。剣拾いに丸腰で魔物の後ろに周り込めとか、お前さんはあのガキ殺したいのか」
アーシュは言われて他の少年少女達とエミリアの位置に意識を向けた。
「今まで一人だったか知らねぇが、戦闘では仲間の立ち位置くらい確認しとけ」
「わかった」
アーシュはうなずくと剣を取りに駆け出した。
それに触発され、大きな動きを見せていなかった魔物が跳躍の構えをとる。
「エミリア!」
「わかってるっ!」
アムドゥスの呼び掛けにエミリアはすぐに応えた。
エミリアはハルバードを振りかぶりながら人面の魔物に向かっていって。
他の少年少女達も同時に動き出す。
「ケケケ! さぁて始めようか。ガキのチームと魔人、ぼっちのガキの連合によるA難度討伐をよぉ!」
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