#3 赤の勇者

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 少女は背中まである真っ赤な髪をポニーテールに結わえていて。 目は切れ長で瞳は深い青。 赤と白で配色されたローブを身に(まと)い、背中にはボウガンを背負っていた。 「ねぇちゃん、やっぱり迷惑だって」  赤い髪の少女の背後で青い髪の少年が言った。  少年は短く切り揃えられた青い髪をツンツンに逆立てていて。 目は切れ長で瞳は深い赤。 赤い瞳ではあるが発光はしていない、普通の人間のものだった。 青を基調とした服と黒い軽鎧(けいがい)を身に(まと)い、背中には短い槍を背負っている。  2人の顔立ちはよく似ていて。 一目で血縁だとわかった。 歳はアーシュより1つ2つ上くらいに見える。 「ちょっと黙ってなさい愚弟。今私が交渉してるでしょ」 「さっき交渉失敗したのはどこの誰だっけ?」 「……あんたよ」 「嘘つくなよ! ねぇちゃんが────」 「うっさい、うっさい、うっさい! あんたがちゃんと私のフォローしてたら上手くいってたの!」 「…………ケケ、なんだこいつら」  アムドゥスがエミリアのフードの中で呟いた。 「けけ、なんだろうね」  エミリアが小声で返す。  赤い髪の少女はディアスに振り返って。 「クリフトフさん、でしたか? 私達、今とても困ってまして」  もじもじと体を揺らしながらチラチラと上目遣いを送る。 「やめとけ、ねぇちゃん。可愛くねぇぞ」  赤い髪の少女はおもむろにディアスの腕にしがみついて。 「どうか永久魔宮に一緒に連れてってもらえません?」  ぎゅっと胸を押し当てる。 「やめとけ、ねぇちゃん。まな板押しつけられても(さば)かれる魚の気持ちにしかならねぇぞ」  青い髪の少年はそう言うとへらへらと笑った。  赤い髪の少女はギロリと青い髪の少年を睨む。 「やっべ────」  青い髪の少年は後ろに飛び退()いて。 だがそれよりも速くローブの裾から鋭いヒールが。 そして引き締まった脚が現れて。 鋭い後ろ蹴りが青い髪の少年のみぞおちを捉える。 「おっふ……!」  後ろ蹴りを受けてその体が跳ねた。 青い髪の少年はみぞおちを押さえながら膝をつく。 その顔は痛みに歪んでいて。 「鎧のないとこ狙うなんて卑怯(ひきょう)だ!」 「あんたが防御してないのが悪いんじゃない。この愚弟!」 「えーと……これ、どういう状況?」  アーシュが目をぱちくりさせる。 「んー、あたしだったら金的狙うなぁって話?」 「え」 「え」  アーシュと青い髪の少年はエミリアの言葉を聞くと顔をしかめて。 2人は股間を手で隠しながら内股で後ずさる。 「いくら愚弟相手でも、さすがに私もそこまではしないわ」  赤い髪の少女が言った。 「けけけけけ」  エミリアは意地悪く笑うと赤い髪の少女へと視線を向けて。 「…………それで、どうしてあたし達と一緒に魔宮に入りたいの?」  エミリアの問いに赤い髪の少女が答える。 「私達、見ての通り駆け出しの冒険者なんだけど、力試しにここの永久魔宮を潜ってみたいなって。ここの難度はE判定。ランクとしては最低のレベルだし、魔物の数も定期的な討伐で多くないからちょうどいいと思ったの」  赤い髪の少女はそこで眉をひそめて。 「それで永久魔宮に入るための申請を出そうとしたんだけど、私達まだギルド登録を済ませてないから(はい)れませんって言うのよ」 「まぁでも、そういう決まりなら仕方ないんじゃないかな」  アーシュが言うと赤い髪の少女はアーシュをキッと睨んだ。 慌ててアーシュは股間をガードする。 「いや、私は金的とかしないし」 「偉そうにしてた男の子が痛みに(もだ)えてうずくまってるの見るの結構面白いよ?」 「あなた、結構ドSね…………」  エミリアの言葉を聞いて、赤い髪の少女は苦笑を浮かべた。 「ケケケ、俺様は嬢ちゃんのそういうとこ好きだぜぇ?」  アムドゥスが小声で言った。 「けけけけけ」  笑うエミリアをアーシュはまじまじと見つめていた。 その視線に気付いたエミリアはアーシュに視線を返して。 「アーくんには金的しないかって? さぁどうでしょーう?」 「いや、絶対しないでよ!」 「けけけ。…………で、クリフトフ(・・・・・)どうする?」  エミリアがディアスに()いた。  ディアスは思案するとアーシュを横目見て。 「かまわないよ。同行を許可する」 「やった!」 「おっしゃ!」  姉弟(してい)は喜びの声をあげた。 「ただし条件がある」  ディアスが言葉を続けると、2人はディアスに視線を向ける。 「俺は手を出さない。魔宮の踏破(とうは)は君達姉弟(してい)とうちのアーシュがパーティーを組んで(おこな)ってもらう」
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