#3 赤の勇者

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「それじゃ最後に」  赤髪の少女はアーシュに()く。 「あの2人は信頼できる人?」 「うん。ディアス兄ちゃんもエミリアもいい人だよ!」  アーシュは迷うことなく答えた。 「んー…………」  赤髪の少女は思案すると青髪の少年に視線を送った。 青髪の少年は視線を返すとうなずく。  赤髪の少女はディアスに向き直ると深々と頭を下げて。 「大変失礼いたしました。ご厚意で魔宮への同伴を許可していただいたのに、疑うような真似を」 「いや、元はと言えば名前を偽称(ぎしょう)していた俺にも落ち度はある。すまなかったな。改めて、俺はディアスだ」 「そういえば自己紹介がまだでしたね。私の名前はスカーレット」  赤髪の少女──スカーレットは自分の名前を告げた。 「俺の名前はシアン」  青髪の少年──シアンがスカーレットに続いて名乗る。 「(スカーレット)(シアン)。覚えやすいでしょ? そして赤と青を混ぜて紫。今をときめく冒険者コンビ、ヴァイオレット姉弟(きょうだい)とは私達のこと! ────て言って周りから歓声が上がるくらい有名になるのがひとまずの目標なの」  スカーレットが言った。 「うわ、ねぇちゃん恥ずかしー」  シアンが半眼で言った。 「ちょっと、愚弟! 先にこれ考えたのあんたじゃないの!」 「何年前の話だよ! 俺らが小さかった頃の話じゃん」 「おれはかっこよくていいと思うよ!」  アーシュが言うとスカーレットは胸を張って。 「ほら見なさい」 「ほら見なさい、どこ見なさい? ねぇちゃん、体反らしても無いもんは無いんだよ」  シアンはスカーレットの胸に視線を注いで。 その視線に気付いたスカーレットはシアン目掛けて足を振り上げる。  シアンはそれをすれすれで回避した。 「うっさいわね! 見えないだけで実際は結構ありますー!」 「あ」  エミリアはふとある事を思い出して。 「アムドゥス?」 「あん? どうしたエミリア」 「あのさ、アムドゥスってスリーサイズも観測できたよね?」  エミリアとアムドゥスはフードの中で小声で言葉をかわす。 「────…………センチ?」  エミリアがぼそりと呟いた。 その声にスカーレットが反応 首をぐるんと回してエミリアを凝視する。 「…………けけけ」 「けけけ、じゃなーい!」 「なになに? なんの話?」  アーシュが(たず)ねた。 「アーシュガルドは知らなくていいの! て言うか誰も知るなぁ!」 「ねぇちゃん、落ち着いて落ち着いて」  シアンがスカーレットをなだめる。  ディアス達は町の奥にある永久魔宮の入口に差し掛かった。 石畳の道の先には山肌から突如現れる毒々しい紫色の壁面。 その手前には石垣と大きな門、さらにそれを柵で覆っているのが見える。 「アーシュ」 「なに? ディアス兄ちゃん」 「魔宮に入るまで喋るなよ。書類に書いた名前と違う名前で呼ばれるとややこしい事になるからな」  ディアスは懐からギルドの受付嬢からもらった通行証を取り出しながら言った。 アーシュはそれにうなずく。  ディアス達は柵の前にたたずむ守衛に歩み寄った。 守衛はディアス達に気付いて。 「ここから先はギルドの管轄下にある永久魔宮になります。探索、通行共にギルドの許可証が求められます」  守衛が言うとディアスは通行証のリボンを解いた。 通行証を広げて守衛に示す。  守衛は通行証に目を通すとうなずいた。 「はい、確認いたしました。ですが、大丈夫ですか?」  守衛はディアスの後ろに並ぶ4人を見て。 「難度が低いとはいえ魔宮に変わりはありません。子供ばかりですが護衛などは」 「問題ない」  ディアスは懐からギルドバッジを取り出した。 「失礼いたしました! A級冒険者様ですね。どうぞお通りください!」  守衛は横によけた。 ディアス達は守衛の隣を横切り、門の前へ。 「開門!」  門の横で待機していた守衛が声をあげた。 その声と共に大きな門がゆっくりと開いていく。 「どうかお気をつけて」  ディアスは門の横にいる守衛にうなずくと魔宮へ。 そのあとをエミリア、アーシュ、スカーレット、シアンが続く。
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