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いや、もともと野良か……、
と思いながら固まる桜子の前で、手嶋さんはバタつく鳥を口にくわえたまま、なによ~という顔で、こちらを見ている。
そ、そうだ。
鳥、まだ生きてるしっ、と思った桜子は、手嶋さんに呼びかけた。
「て、手嶋さんっ。
スコーンあげるから、その鳥離してっ」
手嶋さんは、えー、という顔をした。
……ように感じた。
鳥は、ひーっ、お助けーっ、という感じで、バタバタ暴れている。
今、離せば、まだ大丈夫そうだ。
「鳥がいいなら、ササミ買ってあげるから、その鳥離してっ」
いや、ササミになってる鳥の命はいいのか、と言われそうだが。
まあ、とりあえず、もうササミになってしまっているし、と薄情なことを思いながら、桜子がスコーンを手に手嶋さんの前にしゃがんだ。
手嶋さんは、それ、なに? という顔をしたあとで、鳥を離して、こちらに来た。
鳥は、ひーっ、殺されるかと思ったーっ、という顔で、逃げていく。
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