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「なにをしているの、道明寺桜子。
こんなところで、猫と男とたわむれてるなんて」
と夜子が言う。
いや、猫とはたわむれてたかもしれませんが、唐橋さんとはたわむれてません。
そして、その猫も逃げました……と思う桜子に夜子は言ってくる。
「佐丸様に執事の仕事なんてさせておいて、呑気なものね」
夜子が上から見下すように言ってくるので、とりあえず、立ってみた。
夜子の視線が随分下になる。
夜子は桜子より、かなり小さいのだ。
夜子は一瞬、不快そうな顔をしたが、すぐに気を取り直し、なじってくる。
「佐丸様が屋敷も会社も、なにもかも失われたからって執事にするなんてっ」
微妙に芝居がかっている夜子を見下ろし、桜子は思う。
いや~、なにもかも失った佐丸を即行、見捨てた貴女に言われたくないんですけど~。
夜子は今日も、誘拐して、身ぐるみ剥がして売ったら、家一軒は軽く建ちそうな装いをしていた。
夜子は桜子の視線に気づきながらも、だからなによ? という顔をする。
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