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「いやでも…」
そんなに私と二人きりになりたくないのか。無意味な押し問答をつづけるベルスタに虚しくなってくる。
「三人も寝る場所ないでしょ」
「そ、そうだけど」
「じゃあ泊まれないね!」
モルを見送るベルスタの背中が山小屋のなかに戻りたくなさそうで、「そこまで嫌なら犬に戻る」と声をかける。
容姿に合わせて精神的にも幼くなってしまったのか、戸口から出てきざま、すれ違うときに「ベルスタのばか」とつぶやいてしまった。
姉上の姿変えの術がある結界へ移動しながら浮かれていたことを顧みて反省する。思わず出たつぶやきが聞こえてないといいのに。
ドラゴンの召喚に興味はあったが、そのドラゴンが王となることはどうでもよかった。私のつくった結界を壊すのもいい機会だろう。偉業だといわれているものがなくなればシュルッセル・ラザフォードという魔術師がいたこともそのうち忘れさられる。
ノクトと姉上は話が合うようだったが、どちらも現実離れしていた。穏便に魔物の王の復活を知らしめなければならない、と考えている点で義兄殿と私の意見は一致していたが、どちらも決定権は持っていなかった。
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