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自分の魔力が発現していなければ他人の魔力も感じることはできない。魔力を封じている犬の姿では他人の魔力がわからないのと同じだ。
この使用人は何者だろう。
魔力が発現する人間は限られている。魔力の発現と魔術を使えることは別だが、姉上は魔力が発現している使用人を置かない主義だったはすだ。
逃げるべきか。いや、うまくいけば姉上に会えるかもしれない。と考えていると、別の気配が近づいてきた。
「リリス、おはよう」
今度は男だった。この男には見覚えがある。庭の手入れをしているやつだ。
「おはようございます、グレイさん」
「どうした? 犬?」
「ええ、おつかいかもしれません」
「おつかい?」
「ね、ワンちゃん」
二人がこちらを見下ろすので、胸を張ってここ一番の賢い顔をしてみた。
「なにも持ってないじゃないか」と腕組みをしながら庭師が言うことに賛同しかない。まったくもってその通りだ。出直してくるか。
「でも…あの…リボンしてます」
だからなんだ。
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