19 | 辺境の山小屋 - セルシウス

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「俺にしかできないこと?」  取った手に口づけをすると、真剣だった表情が困惑にゆがむ。 「手紙を読んだあとで相手をしてくれるのだったな」 「まさか…こんな時に冗談はやめてください」 「心外だ、冗談ではない」 「子供じゃないですか、無理です」 「見た目だけだ。魔力量は減っていないから交換するのに問題はない」  ベルスタは苦しげに「…俺が、無理です」と言う。老ぼれ魔術師とは違い、私の羊飼いには常識がある。それも含めて好ましい。 「無理かどうか試してみようではないか」    ◇◇◇  まるではじめてのような、触れるだけの口づけをする。これだけではベルスタの魔力を感じることはできない。 「屋根裏へ行かないのか」  私たちは長椅子に並んで座っていた。 「セルシウス、なんですよね?」  発言は無視され、なんのために必要なのか不明な確認が返ってきた。 「そうだ」  ベルスタは私の髪を指ですいて頭を撫でる。雑なようでやさしくて心地好い。 「でも本当はシュルッセル様だ」  何度同じことを言うのか。 「まあな、その名前は捨てたけどな」
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