19 | 辺境の山小屋 - セルシウス

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 私にとっても魔術の交換は言い訳でしかなかった。ベルスタも同じだというならなにも問題はない、はずがこの姿だ。まさか、元の姿に戻るまでできないということか。 「拒否できないと言ったな」 「はい?」 「お前が困る必要はない。この体で満足させてやれるかはわからないが尽力する」  こちらに向けられた顔がぎこちなく歪んでいく。 「…犬の姿に戻るのでは?」 「気が変わった、逃げるなら今だぞ」 「手をつかんでおいて…」 「子供の力だ。嫌ならふりはらえばいい」  我ながら卑怯な言い方だ。案の定、困り果てているベルスタに良心が痛む気がして、自分に良心が残っていたことに驚く。  なにがしたいんだ私は。「冗談だ」と言って掴んでいた手を離した。 「そう怯えるな。少し調子にのっただけだ。追いかけてきてくれてうれしかった…ありがとう」  立ち上がり、「アレッポの地帯に姉上の結界があるんだ。そこへ…」と話を切り替えていた口の端にベルスタのくちびるが触れる。 「アレッポ樹林ですね」  なにもなかったかのようにベルスタは歩きはじめる。 「…なんだその子供みたいな口づけは」 「子供にするんだからこんなものでしょう」
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