1 | 片腕の羊飼い - ベルスタ

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 一週間前、爺さんと注文リストを作成していたときに、「新聞は必ず頼むこと、山小屋にいると国が滅んだとしても気付かんからな」と言われたが、それは俺のためというよりセルシウスのためだったんじゃないかと思えた。 「あいつは俺を主人と認めていないんだ」  麻袋から目的の茶葉を取り出しながらついぼやいてしまう。 「たしかに、オンス爺がいた頃とは露骨に態度が違うなぁ」 「山小屋への配達仕事はいつからやってるんだ?」 「十三歳で親方に付いてクーリエをはじめてからずっと通ってるよ。だから、六年前かな」 「その頃から二匹はいたのか?」 「ううん、昔は別のもっと年寄りの犬がいたよ。ケルビンは三年前くらい、仔犬と遊べるから山小屋への配達日が待ち遠しかったのを覚えてる」 「セルシウスは?」 「二年前かなぁ。僕が出会った頃にはもう成犬で、オンス爺は迷い犬って言ってたけど」  迷い犬、か。  湯が沸いたから鍋の中へ適当に茶葉を入れる。しばらく蒸らしてから、木製のボウルへゆっくりと注ぐ。  モルがぽつりと、「さびしいのかも」と言った。 「…犬が?」
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