1 | 片腕の羊飼い - ベルスタ

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「しばらくとはどれくらいだ」 「二、三日か、一週間か。もし戻らなければ運が悪かったということだ。さあ、腹ごしらえをするぞ。うまそうな匂いのするスープだな」  戻らない可能性もあるのか。一体どこへなにをしに行くつもりなのか。聞いておきたいが、俺にはしゃべる犬の核心を知る資格がないように思う。 「もう少し煮るから待て…」 「なんだまだ食えないのか」  セルシウスはかまどの前に座り尻尾をはたはたと揺らす。出来上がるまでそうしているつもりなのか。揺れる尻尾を横目で見ながら、犬も旅支度をするのか気になった。それくらいなら聞いてもいいだろうか。 「準備はいいのか、荷物をまとめたり」 「…犬に荷物がまとめられると思っているのか」  冷静に返されると若干腹がたつ。 「思ってない。聞いてみただけだ。首輪をしてないんだから野犬に間違われて無駄死にするなよ」  尻尾の揺れがぴたりと止まる。 「ふむ…それは考えていなかった。首輪か…、あると安心だが。ここには適したものがないだろう」
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