先生

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中1の、初めての授業。周りを見て驚いた。みんなアルファベットが書ける!なぜ? 私は全く書けない。私の中1英語どん底生活の始まりだった。be動詞?なんじゃそりゃ。 do、does、did‥知るかぁーそんなもん! 中1の英語の成績のおかげで何度親にしばかれたことか。 「あほかぁ!おまえは!」 「いったーぃ」 あー、私には英語は一生無理だ。なぜ英語を学ばないといけないのか。憂鬱な英語。 中2の初めての英語の授業で予期せぬことが起こった。 「えー、今日から僕が英語を担当する‥。」 パッスーン!頭をスリッパでしばかれたような衝撃。すっごいタイプ!私の初恋、一目惚れ。それからはすごく英語を頑張った。1学期末テストでは90点を超えていた。教科書以外にも、新聞でテレビ英語講座なんてのを探したりもした。なぜこんなに頑張ったのか?理由はたったひとつ。認めて欲しかった。小太り、地味、ブス‥。先生が声をかけるのは目立つかきれいな子たち。(と思えた)。 これは成績で目立つしかない!あーちょろい、ちょろいぞ、私。あわれな中2生。声をかけてほしい!その一心でめちゃくちゃ頑張った。 とあるテスト返却の日。99点!「何、これ⁈」「はっ?あー‼︎ピリオド一個忘れてるー!」あまりの悔しさにテストを返却している先生を睨みつけてしまった。 「何や、その目は。」 「いや、悔しくて‥。」 「なら、いい。」 いつもは恥ずかしくて見れない先生の目も悔しさのあまり、まっすぐ見返すことができた。 中2の秋も深まったある日。「えー、明日から俺は筆記体で授業をするから一晩で覚えてくるように。ブロック体書くのは面倒やからな。」 筆記体⁈えーと、どれどれ‥教科書を見てまた衝撃が!これ一晩で⁉︎とにかく半泣きになりながら寝ずに覚えた。 翌日。「どうせ、言うてるだけやろ。筆記体でなんて、せえへんで。」と言うあらかたの生徒の希望的観測を裏切り、サラサラと先生は筆記体を黒板に書きだした。 「ほんまにやりよった‥。」 ざわつく生徒を尻目にクールな顔で授業をすすめる‥。 って、汚ったな!汚すぎる筆記体。読めない。「先生、その筆記体読めませーん。」 と言う男子に「おまえが練習してないからや。」いや、違う。これはアメリカ人でも読めないよ。でも全く気にすることなく授業を続ける先生。おかげでその後、どんな汚いネイティブの書く筆記体でも読めるようになった。 こんな調子で3年も終わり、卒業の日。 別れがつらくて号泣する私をもてあましたのか、 「もう泣くな。将来先生になって一緒に働いたらええんやぞ。」 泣いてさらに不細工になった私に初めて優しい声をかけてくれた。 「んんっ⁈おー!そうか!その手があったかあ!」この時、私の将来は決まってしまった。先生になって、この先生と机を並べて働く! あわれな15歳にまたもや先生の背中を追いかける旅が始まってしまった。
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