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レポート1
その日は終業式で俺たちは午前中で帰る。
三年になれば、受験で、右を見ても左を見ても参考書を開き、まじめに勉強しないといけない一年になるんだな―なんてのんきに話している奴ら。
おーっと、自己紹介。
お久しぶりです、センタこと。真壁仙太郎です。
去年、クラスメイトの山岸一馬の家の側で事件が起きた。その時から、中村雄一と隣のクラスの遠藤はるみ、そして一個上の日向先輩と仲良くなった。
警官の田神さん、冴島さんという、普通ならあり得ない人たちとも交流できたのは一馬のおかげだ。そして二年生は僕にとってもとても充実した毎日だった。仲間、なんていうのは面倒くさい関係だと思っていたけど、こいつらといるのは案外居心地がよかったんだ。
そして今、僕はひじょーにうれしいのです、なぜかというと、塾も予備校もこの時期だけは休みに突入するからです。たった一週間程度だけどね。
去年はどうやって時間を過ごそうかと、人とつるむことを避けるようにしていた僕には、友人と呼べる人は受験には必要ないと思っていたから、気が付けば親友と呼べる人もなく、うわべだけの友人を作り、卒業すればどうせ関係ないなんて思っていたから、参考書を開いては、復習していた毎日だったんだけれども。
まあそんなんで持て余していた時間、今年は、そうでもなさそうです。
なぜかって?それは、こいつらといると、面白いことに巻き込まれるから、もしかしたら今日もなんて期待をしていたんだ。
一馬たちと付き合い始めて、僕は、手帳を持つようになった。
今まではスマホに情報だけ入れているだけだったが、あいつといると、毎日のちょっとしたことを書き留めているだけで、物語ができてしまうことを発見、メモだけではなく日記の役目も十分果たすこのシステム手帳、予定の蘭が空白なのが少しおかしくてうれしかったんだ。
「何にやにや見てるんだよ?」
雄一、彼とも長い付き合いになりそうだ。
「真っ白じゃん、どうかしたのか?」
一馬、こいつに誘われなければ去年はあんな出会いはなかったかもしれない。
塾が休み、三年になれば塾から予備校へと格上げ、その準備期間だと話した。
「三年、塾、頭が下がります、ごくろう様です」
「無理―、ぜってーむり、今から行けって言われてるけど、いやだー!」
なんて言っている二人と掃除を終え、生徒たちは部活や、帰りの準備をしている。
なんか二人とも多い荷物に笑った。
引っ越しと同じなんだよ、なんて言ってるが、ロッカーの中にものを貯めすぎなんだといった。
ガラッと扉を開けると、誰もいない図書室、それも今日まで、学校が始まるまで休みとなる。
「誰もいないのー?」
「勝手に入るよー」
「お邪魔」
準備室から顔を出した一年生が、また来たというような顔で、どうぞと答えた。
三年生の受験が終わると、ものの見事にしんと静まり返ったこの場所は、一馬の居場所だったけど、いつの間にか、この窓側の机の上に俺たちはかばんを置き、一馬が持ってくる新聞をのぞき見するのが日課のようなものになった。
「空き巣多いな」
広げた新聞を覗き見た。それぞれが椅子に座る。
「そんなに遠くないけど、範囲はここじゃないからな」
現金や通帳はもちろんだが、ノートパソコン、スマホ、置物に至るまで取られたと書いてある。
「なんか、手当たり次第だな」
引越しの最中にもっていかれた、こうなれば、どこかで見ていたとしか思えない。
「引っ越し業者もトラックから離れられないね」
一馬に言わせれば、大きな事件なんて言うのは、ちゃんと警察が調べているから犯人が捕まるのは時間の問題だけで、毎日起きるものではない。
ニュースに上がるのは結局、こまごまとした事件を大きく見せて印象づけるだけのこと、処理できなかったのは、俺たちがかかわってきたみたいに、警察は隠すし、大手を振って犯人見つけられませんでしたなんて言えるわけないから、結局隠したまんま。
ページを開くと、そこには空き巣被害にあったところに印がついていた。家のそばだな。
「それに踊らされてる?」
「本当だよなー、飯だけじゃなくて、なにかくれよって言いたいよな」
田神さんとはあの後何度かいろんなものを食べさせてもらっていたけど、
「やっぱ、現金?」
「そのほうがやりがいあるだろ?」
まあな、なんて話していると、きゃぴ、きゃぴした話し声が聞こえてきた。
「早いー?」
「またつるんでるー」
はるみたちが入ってきた。
遅かったなと話すと、女子はまじめに掃除してるんですと答えた。
新聞を見ては、ギャーギャー話していた。
ドアがバンと音をたてた。
準備室が開いたのだ、睨むようにこっちを見る後輩。
「すみません」
「騒ぎすぎた」
「ごめんね」
それを見て笑う俺たちに、ひゅん、ひゅん、と何かが飛んできた。キャッチした一馬、雄一。さすが元バスケ部。
「あっぶねーな」
「こえーよ」
「先輩たちはこっち!五月蠅すぎ!」
すまないねーと、俺たちも準備室へ、飛んできたのは黒板消し、すんませんでしたと誤る俺たちに、腰に手を当てよろしいという姿は、第二のはるみだなと話しながら準備室へ入っていった。
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