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プロローグ
小さなことこそ大切なのだよ、それが私の信条だ。
Byシャーロックホームズ
三年生になった俺たちは相変わらず田神さんに振り回されているような気がしていたが、それもなんか心地いいような気がしていて。
ぶんぶん、俺そっちじゃねえし、それよりも、あの人がどこからか湧いて出てきそう。辺りをきょろきょろ、いねえよな。
あれ?ふふーん、みーつけた。
季節は夏、そろそろ夏休みの計画なんて、それも言ってらんない、受験生よ俺たち。
校長の事件の後、勉強で忙しいと言いながらもこうしていられるのは心にゆとりができたからかな?なんて、今俺の前をとあるカップルがいちゃいちゃと歩いている。
このくそ暑い中、まるで二人だけの世界、俺が後ろにいるなんて眼中にないんだろうな、いつ脅かしてやろうかと、ちょっと距離を取りながら歩いていた。
いつも塾と予備校で、休みなんかないと言っていた堅物がまるで外国の人形みたいな可愛い女の子と肩を並べ楽しそう、いいけどね、勉強はいいのかね?
「あ?」
横を向いた彼女と目があった、そらしたけど彼女の声でばつが悪くなった。
「なに?あー」
振り返り、顔を片手で隠すようなそぶりは、見つかった―とでも思っているのか―この―。
「あーあ、見つかっちゃった、デート?邪魔はしないよ、俺もこっちに用があるんだ、じゃな、センタ」
「一馬‼内緒にして!」
「わかってる、じゃな」
ちょっと背の高い短髪の黒髪が走るとひよひよと寝ぐせで逆立った髪を揺らしていった。シャンシャンと鈴の音を残して。
「仙太郎君大丈夫?」
ブルーの瞳が俺を覗き込んだ。
「こんなところで会うなんて思ってなかった」
「ごめーん」
「いいさ、たまの息抜きだ、時間は?」
「まだ余裕あるよ?」
「久しぶりの映画だし、満喫しよう、いやでも明日から机にしがみつかなきゃいけないしね」
「ハ~、受験生か、お互い、半年頑張ろうね」
「うん、行こう」
ちょっとはにかんだ彼女の手を取ってあるき始めた。
彼女との出会いは卒業式が終わって、三月末の入学式までの少しの間。最後の、春休みとなるときに出会ったんだ。
小林さんに依頼された事件はまるで、招き猫が呼び寄せるように、事件の真相を手繰り寄せていった。
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