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まなざし
朝、お弁当はどうしようかと悩みながら目を覚ました。昨日はリアムの家に行って帰宅が遅くなったので、お弁当のおかずの買い物ができなかった。この前みたいにおにぎりを握って持っていき、バッド・デイズで唐揚げを買ってもいい。そういえばリアム、元気になったかな。今日は『ミント』に来られるだろうか。
一階に下りて冷蔵庫をのぞいてみると、合いびき肉が一パックとスナップエンドウが一袋入っていた。
「お母さーん、挽肉つかってもいい?」
「どうぞー」
了承は得たものの、何を作ろうか。スマホでレシピを調べるとそぼろかハンバーグといったところだった。
――ハンバーグにしよう、好きだし。簡単に、つなぎとか使わずに。
まず小鍋にお湯を沸かして塩を入れ、スナップエンドウを茹でた。何もつけなくても甘く感じるし、鮮やかな緑がお弁当に映えるのがいい。さっと湯がいてざるにあけて冷ましておく。
次に玉葱を取り出して半分に切り、みじん切りにし、フライパンで炒める。少しずつ透明になっていくのが楽しい。薄茶色に変わったタイミングで火を止め、ボールにあけた。そこに挽肉と塩を入れ、こねる。パン粉も卵も面倒くさいから使わない。挽肉を握るとむにゅっと指の間を抜けていく感触がこそばゆい。小さめに分けて、丸めて手と手の間をキャッチボールのようにさせ、ペタンペタンと空気を抜く。平らにして真ん中を指で押して少しへこませる。
さっきのフライパンの中を軽くふきとり、火にかけてハンバーグをのせて焼く。種は三つできたので全部焼いてしまい、残りは冷凍しておこう。焼き色がついたら裏返して蓋をかぶせる。その間にケチャップとソースを冷蔵庫から取り出した。
ハンバーグの一つに爪楊枝を刺し、透明な肉汁が出たら皿に取り出す。そのあとハンバーグの肉汁が残ったフライパンにケチャップとソースを入れて、火にかけてかき混ぜる。味見をするとちょっと濃いので、冷蔵庫にあった父の赤ワインをほんの少しフライパンに投入した。香りが立ち昇ったらハンバーグに絡めてできあがり。
曲げわっぱにご飯を少量入れ、いつか使おうと思って買っておいた冷凍のお弁当用スパゲッティと昨日のサラダの残りのレタスを敷き、ハンバーグをのせた。
――思ったより大きかったがそれもまあよしとしよう。
最初に茹でたスナップエンドウとミニトマト、ピンク色の生姜をあしらえば、完成だ。
意外とスムースにできて、お弁当作りも少しづつ慣れてきたように思った。残りのハンバーグの一つはラップに包んで冷凍し、もう一つはソースに絡めて朝ご飯に食べてみた。ほんの少し食感が固い気がしないでもないが、つなぎがなくても充分おいしい。お弁当のハンバーグはこれで決まりだ。
もし今日リアムが『ミント』に来て、このお弁当を見たらなんて言うだろうか。想像してみたが、ろくな事を言わないに決まっていた。私はぶるぶると首を振り、曲げわっぱの蓋をして小さな風呂敷で包んだ。
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