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第1話 1つにつき3つ
「1つにつき3つ」
そう言って、男は立てた右手の人差し指を一本から三本へと増やすと、不気味な口元から酷く尖った青白い歯を覗かせた。
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1人の男の子が全面黄色一色に覆われたひまわりの絨毯の中をひょこひょこと頭を時折覗かせては、楽しげに駆け回っている。男の子の名前は、林田翔平。待ちに待った5歳の誕生日を迎えた喜びと、久しぶりの母との逢瀬に、テンションを上げるなという方が無理な話ではある。
「危ないから」と止める母の手を引き、翔平はさらに奥へ奥へと突き進んでいく。大好きな母の愛と大好きな黄色を一身に浴び、少年は上気した顔で時折背後を振り返る。そこには少し照れたような母の笑みがあった。
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「まず、1つ」
男はおもむろに右手の人差し指を口に当て、
「次は、どんなものを見せてもらえるのか…」と呟くと、口元を楽しげに歪ませた。そして、ゆっくりと手をこちらへと差し出しながらジリジリと近づいてくる。
思わず、私は駆け出していた。
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